マレーシアと北朝鮮 報復の連鎖
Japan In-depth / 2017年3月8日 0時0分
■北朝鮮もマレーシア人を「人質」に
一方、北朝鮮の国営朝鮮中央通信社は7日、北朝鮮国内に居住するマレーシア人の出国を禁止する措置を取ったことを発表した。「マレーシアの北朝鮮外交官や国民の安全確保のため」とその理由を説明した。
これに対しマレーシアのナジブ首相は即座に反応し「(北朝鮮にいる)マレーシア国民を事実上人質にとるようなこの卑劣な行為はあらゆる国際法や外交の常識を完全に無視したものだ」との声明を発表して北朝鮮を厳しく非難した。
マレーシア政府は北朝鮮大使館内にいる外交関係者に対して自由な出入りを禁止する措置を講じただけで、マレーシア国内に居住している留学生や労働者数百人に対する出国禁止措置は、現時点では取っておらず、希望すれば自由に出国はできるとしている。
マレーシア外務省などによると現在、北朝鮮にはマレーシア人11人が滞在しており、全員の安否を確認しているという。北朝鮮のマレーシア大使館の大使はすでに北朝鮮の暗殺事件への非協力的姿勢に抗議するためマレーシアに帰国しているが、大使館職員3人とその家族6人、一般市民として現地でビジネスをしている2人の合計11人が北朝鮮に残っているという。
在北朝鮮のマレーシア大使の帰国、在マレーシアの北朝鮮大使の追放、在マレーシアの北朝鮮大使館の封鎖、北朝鮮国内のマレーシア人の出国禁止と両国の外交関係は、北朝鮮側が暗殺事件の捜査に非協力的であることから報復合戦の様相を見せ、エスカレートし続けている。
■ASEAN地域フォーラム、北朝鮮欠席も
こうしたマレーシア政府の強硬な姿勢をマレーシアのマスコミ、国民は支持しており、場合によっては国交断絶も辞さないというナジブ政権には東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の他国などから支持と連帯の動きが出ている。ASEANは今後、議長国であるフィリピンで外相会議、首脳会議、日米韓中なども参加するASEAN地域フォーラム(ARF)、拡大外相会議などの一連の重要な会議を控えている。
特にARFは北朝鮮もメンバーとして参加しており、今回の暗殺事件がマレーシアを舞台とし、インドネシア国籍、ベトナム国籍の2女性が実行犯として逮捕・起訴されていることなどからASEANが結束して北朝鮮に厳しい姿勢で臨むことが予想されている。
そして早くも「現状では会議でどんなに自国の勝手な理屈を並べても北朝鮮の厳しい立場は変わらない可能性があることから会議を欠席することも十分ありうる」(ASEAN外交筋)との観測も出ている。
ARFは北朝鮮が正式のメンバーとして参加できる数少ない国際会議の場であることから、欠席となると北朝鮮の国際社会での孤立化は決定的となり、「テロを含めた予期せぬ突発事態」(同)への懸念も水面下では広がっているという。
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