怯える金正恩の暴走に備えよ
Japan In-depth / 2017年3月11日 18時0分
一方、金正男氏の母であり、金漢率氏の祖母である成蕙琳氏の家系も、南鮮の「敵対階層」の地主出身であり、朝鮮戦争中、韓国から北朝鮮へ渡った入北者であるところも、「敵対階層」となる。しかも、蕙琳氏は夫のある身でありながら、金正日と不倫をし、金正男氏を身籠ったという、後ろめたい経歴まである。
北朝鮮の「革命」の基準における出自の正統性は、金漢率氏も金正恩も五十歩百歩なのだが、問題は人民からの支持と敬愛をどれだけ受けられるか、自身の「物語」にどれくらいの正統性があるか、どれだけ国際社会の承認を得られるか、そしてどれほど勇気があり自身のことに自信を持っているか、という指導者の資質だ。
■金漢率の存在が金正恩を脅かす
北朝鮮専門家であり、『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏は、「甥っ子・金漢率の勇気が、金正恩を脅かしかねない」と指摘するが、その通りだろう。北朝鮮のすべての権力を掌握しているにもかかわらず、臆病で疑心暗鬼に陥った金正恩と、「消される」危険性を顧みずに、自身の潜在的な北朝鮮国家に対する指導責任を明らかにし、金正恩の嘘に堂々と異を唱えた金漢率氏。金正恩の圧政に呻き苦しむ人民は、どちらを愛し、支持するだろうか。
平壌生まれの金漢率氏だが、北朝鮮育ちではないという、重大な欠陥がある。しかし、それが却って「人民を直接抑圧したことがない」「海外で学んだ開放的で進取精神に富む考えを、北朝鮮の再建に活かせる」という有利な「物語」につながる。
金正恩政権が崩壊すれば、求心力のある暫定指導者が求められるのは自然であり、「白頭の血統」で、金正恩のように両手が人民の血で汚れていない金漢率氏の利用価値は、高い。
金漢率氏の動画を公開した「千里馬民間防衛」は、金漢率氏の保護に、米国、中国、オランダ、そして別のもう一か国の支援があったと明らかにした。正恩のライバルに、超大国の米国と中国を含む、広く国際的な支持があるというのだ。
■金正恩暴走に備えよ
金正恩は、潜在的脅威の兄・金正男氏を消すことで、枕を高くして寝られると踏んだ。だが自身が指示した暗殺の結果、野心のなかった金正男氏の比ではない、人民の敬愛と支持を広く集め得る「大物」のライバルが、自分に真っ向から挑戦してくるという、意図しない状況を生んでしまった。
金漢率氏は、米中をはじめ、国際社会の潜在的支持まで取り付けている。恐れおののいた金正恩は、狂ったように暴走する可能性もある。日本政府は、「金正恩政権崩壊後」をにらんで金漢率氏との太いパイプを確保するとともに、金正恩暴走に先回りし、米軍と共同で、日本を狙う北朝鮮ミサイル基地・工場・移動発射台に対する先制攻撃が可能だと知らしめ、日本攻撃を断念させる方策を練るべきだ。
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