迫りくる第三次世界大戦の危機
Japan In-depth / 2017年3月12日 23時50分
「中国とロシアのそうした軍事的な脅威や攻撃を防いできたのはアメリカがその同盟諸国と一体となっての強大な軍事能力による抑止だった。だが中国もロシアもアメリカのその抑止力を弱体化するための対抗策を常に計画し、実行してきた」
「そのうえアメリカのその抑止力も近年はアメリカ自身の内外の多様な理由により、弱くなってきた。とくにここ八年のオバマ政権では大統領自身が対外的な力の行使をしないことを宣言し、実際の米軍の規模や能力も国防費の大幅削減ですっかり縮小した」
「アメリカの軍事面での抑止力がいざという際に発揮されない展望が強くなると、中国とロシアはともに軍事力を使って、自国の戦略目標を達成することへの傾斜を激しくする」
「その結果、いまの世界は中国やロシアの野望からの軍事力行使の危険がかつてなく高まってきた。だからいまや中国やロシアの軍事行動に対してアメリカが対応せざるを得ず、第三次世界大戦が起きる危険までがかつてなく高まってきた」
「中国やロシアの経済や政治での膨張に対してはアメリカなどの諸外国も柔軟に対応ができるが、軍事の領域では一方の膨張による現状破壊を止めるには軍事的対応での抑止の事前の宣言しか方法がない」
■トランプ政権下、軍事力復活が必要
ケーガン論文は以上のように、いまの世界が中国とロシアの軍事行動による地域的な戦争の危機を高めてきた、と警告するのである。たとえ世界大戦が新たに起きなくても、中国やロシアの軍事膨張の結果として自由主義的な世界秩序の崩壊もありうる。とまで述べるのだった。
ケーガン論文はこの危機への対策としてアメリカがトランプ政権下で強固な軍事能力を復活させ、世界戦略面でのリーダーシップを再発揮することをも提唱していた。ただしトランプ政権が米軍の再増強や「力による平和」策を宣言しながらも、世界での超大国としての指導権や安全保障面での中心的役割を復活させることにはなお難色をみせていることをも、同論文は指摘していた。
しかしその一方、ケーガン論文は今回の大統領選でトランプ氏を選んだアメリカ国民はオバマ政権の対外的な縮小・撤退の政策のためにいまの世界が危機を高めてきたという認識をも抱き、その批判的な認識がトランプ氏支持の有力な原因となったという見方をも示していた。
いまのアメリカ国民の多数派は自国の対外的な軍事介入をストレートに望むわけではないものの、アメリカの影響力の大幅後退やその衰退にも懸念を抱き、反対するというわけだ。
いずれにしてもトランプ氏はアメリカ内外のこうした非常事態下に生まれた異端の大統領だということだろうか。
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