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阻止せよ、トランプドル安政策

Japan In-depth / 2017年3月18日 7時0分

企業のほうはグローバルに展開しているので、ドル相場の変動で部品や製品の輸出入システムを変えるわけではない。ドル安で輸入コストがかさんでも、おいそれと国産化できない。

それでも、政治家や経営者の多く、さらにエコノミストの一部がトランプ政権と同じく、ドル安で貿易不均衡を是正できると信じているのは、摩訶不思議と言わざるをえないのだが、ドル安が絶対的な効力を発揮する面がある。それが米企業などの海外資産である。

■ドル安で膨らむ企業の海外資産

グラフをもう一度、みていただこう。ドル安にぴったりと連動しているのは海外資産の増加幅である。多国籍化している企業は、ドル安になれば、現地の工場資産や金融資産のドル建て換算値がかさ上げされる。ドルは基軸通貨なので、海外資産は絶えずドルで表示される。海外法人を含めた連結財務が示す収益はドル安のたびに膨らむ。企業経営者や投資家は高収益になるので、ドル安を歓迎するはずだ。

インフラ投資や法人税減税の財源確保が懸案のトランプ政権は、米企業の海外法人からの本国への利益送金を促し、税収を増やそうとしている。その場合、税制面で優遇するわけだが、ドル安になればなるほど、還流資金は膨れ、低税率でも税収が大きく増える。

それでも、ドル安による利益かさ上げもしょせんは一過性だ。肝心の貿易赤字是正とは無縁なのに、ドル安に依存しようとするのは、一時的な幸福感を忘れなくなってしまう麻薬中毒患者のようである。

■ドル安は災厄を招く

ドル安が長期化する結果はどうなるか。1987年10月には史上最大規模のニューヨーク株価の大暴落「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」が起きた。2008年9月の「リーマンショック」も6年間にも及ぶドル安の帰結とも言える。

前述した日銀の超金融緩和の長期化はブラックマンデーに衝撃を受けた米財務・金融当局と日本の大蔵省(現在の財務省)が日銀に圧力をかけて、金融引き締めをやめさせた結果だ。日銀は株式や不動産のバブル膨張を放置する羽目になった。

リーマンショックのあとは、米連邦準備制度理事会(FRB)がドルを大量発行する量的緩和政策に踏み切り、大恐慌を回避できたが、中国はドル資金増量相当額の人民元を発行して不動産開発や生産に投入し、不動産バブルと設備過剰を招いた。打開を迫られた中国は経済、軍事両面で対外膨張政策をとり、アジア周辺国の脅威になっている。

ドル安政策をとれば、米国にとっても、日本や世界にとってもろくなことにならないのだ。

トップ画像:ⓒ田村秀男

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