蘭総選挙・与党右派阻止に疑問符
Japan In-depth / 2017年3月22日 0時7分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#12(2017年3月20-26日)
今週は安倍晋三首相の欧州歴訪が予定されている。今回ほど欧州諸国首脳が、「日本の首相は何を言うか」に強い関心を持つことはなかったのではないか。混乱する米トランプ外交の中で、対アジア、対日外交だけが大きなサプライズもなく、まともに動き出しているように見えるからだ。
だが、個人的には先週15日のオランダ総選挙の結果の方に関心がある。日本の有力紙は蘭現与党が下院第一党を維持したことで、「オランダ『寛容』守る」、「右派阻止、EUから賛辞」などと手放しで評価していた。本当にそうなのか。先週指摘したように、オランダ与党はトルコとの軋轢を政治的に利用した。
あれだけの「劇場政治」をやったにもかかわらず、ルッテ首相率いる自由民主党は議席数を7も失った。逆に言えば、先週トルコが騒がなければ、もっと極右が台頭していたかもしれないのだ。政権与党は辛うじて主導権を維持した、と言えないこともない。事態はより複雑かつ深刻なのではないのか。
選挙といえば、26日に香港行政長官選挙が投開票される。中国指導部のお気に入り「本命」の前政務長官キャリー・ラム女史に反対する人が学生を中心に増えつつあると報じられた。気持ちは判るが、今の香港で真の民主的選挙が行われる可能性は限りなく低い。恐らく状況は今後更に悪化するのではないか。
〇欧州・ロシア
20日に日露2+2会合が開かれた。この数週間で米国の国防長官、国務長官が相次いで訪日し、今度はロシアだ。これで日露関係が進展するとは思えないが、こんな会合が開かれること自体、時代の流れを大いに感じる。領土問題とは別に、こうした日露対話を積み重ねることは、やはり重要だろう。
〇東アジア・大洋州
今週はアジアの域内外交が活発だ。19-22日にフィリピン大統領がミャンマーとタイを訪れ、イスラエル首相と5閣僚からなる代表団が訪中する。21-24日にはシンガポール首相がベトナムを訪問し、22-29日には中国の国務院総理がオーストラリアとNZを訪問、23日からは中国海南省でボーアオ会議が開かれる。
〇中東・アフリカ
25-26日にOPEC諸国が会合を開く。前回の会合で決めた減産を継続するか否かを議論するというが、シェール革命後の原油グラットの中で価格を高値安定させるのは難しい。このことは1980年代の経験で分かっている筈なのだが、大丈夫なのだろうか。
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