米国株式会社の弱さでトランプ対外強硬策へ
Japan In-depth / 2017年4月1日 18時0分
株価と対比させてみると、リーマン後、株価は順調に右肩上がりに上昇しているが、ROEからのかい離が際立っている。企業収益率は低下しているのに株価が一本調子で上がり続けることは不自然だ。
収益率好転と株価上昇がかみ合ったのは2000年代初めからの住宅ブーム期である。当時のJ・W・ブッシュ政権が情報技術(IT)バブル(あるいはドットコム・バブル)崩壊後の経済回復策として、住宅ブームを演出したが、消費者に住宅相場の値上がりを先取りして借金させ、消費を刺激する手法だった。言わば債務バブルがもたらしたROE上昇だった。
リーマン後の景気回復は、連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和政策が担った。それは金利を大きく下げ、余剰資金を株式市場に流れ込ませ、株価を上げることに成功したが、実体経済の回復速度は遅い。企業収益の回復力は弱々しくなる。しかもFRBは金利を引き上げて金融政策の正常化を急がなければならない。
こう考えると、トランポノミクスは脆弱になってしまった米国株式会社の建て直しとしての意味がある。財政出動と減税で需要を喚起する。企業には対外投資をやめさせ、国内投資を優先させる。輸入を抑え込み、輸出を増やさせるために、通商法による懲罰関税や為替操作国への報復も辞さない。これらの政策が議会の抵抗にあうばかりか、経済的にも逆効果を招く恐れがあるとは上述した通りだが、米国株式会社の再浮揚を求められているトランプ氏はそれで引っ込むことはないだろう。
金利高になるというなら、FRBには利上げさせないよう政治的圧力を加える。国境調整税導入など保護貿易手段がドル高を招くなら、相手国に対し、その通貨の対ドル相場の押し上げを求めるだろう。日本としては、トランポノミクスに投資や技術面で協調する余地は十分あるのだが、まずは中国と同列扱いするなと釘を差すべきだ。
トランプ大統領は4月6、7日に安倍晋三首相も招いたフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で習近平中国国家主席と会談するが、人民元の対ドル・レート引き上げで合意しても、北京は人民元相場を管理、操作しているのだから当然だ。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
5月以降の日経平均上昇を裏付ける「3つの追い風」 今後もドル高円安の大幅修正は見込みづらい
東洋経済オンライン / 2024年4月28日 9時30分
-
日本株には「超強気」だが…経済の専門家が米国株の「バブル化」を警戒する理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 9時15分
-
円安の流れはしばらく継続?
為替の見通しや介入の有無を徹底解説Finasee / 2024年4月19日 7時0分
-
地政学リスクと現金(日本円)の崩壊
トウシル / 2024年4月18日 17時15分
-
米国に景気後退は訪れるか
著名エコノミストが語るグローバル市場見通しFinasee / 2024年4月17日 7時0分
ランキング
-
1物価の優等生『もやし』生産者はようやく少しずつ値上げ…しかし消費減で悲鳴「このままでは生産者がみんな廃業してしまう」
MBSニュース / 2024年5月8日 19時18分
-
2損保大手、火災保険料引き上げ=10月に10%、災害激甚化で
時事通信 / 2024年5月8日 17時54分
-
3トヨタの営業利益5兆3529億円、日本企業で過去最高…最終利益も倍増し初の4兆円超
読売新聞 / 2024年5月8日 14時25分
-
4「コカ・コーラ」や「ジョージア」…141品を20円値上げへ 10月出荷分から
日テレNEWS NNN / 2024年5月8日 19時30分
-
5「次を決めずに辞めてもいい」実は英断な“あえて無職”=「キャリアブレイク」の活用を経験者に聞く
オールアバウト / 2024年5月8日 21時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください