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シリア攻撃、米に長期的リスク

Japan In-depth / 2017年4月9日 23時0分

ロシアに支援されるシリアを攻撃することで、トランプ政権のロシア内通の疑惑を払拭することもできた。こうした意味で、シリア攻撃は第一義的にトランプ政権が直面する国内問題の解決を図ったものであったと言える。

■大成功だったわけ 外交

 対外的には、自国民に対する蛮行をやめようとしないアサド大統領をはじめ、「中国夢」で西太平洋全域の支配を目論む習近平主席や、米国を侮った軍事的挑発をエスカレートさせていた金正恩に対し、短期間で破壊的な攻撃を行える米軍の威力を見せつけ、同盟国をして改めて忠誠を誓わせることとなった。

さらにトランプ大統領は、寄港先のシンガポールからオーストラリアに向かっていた原子力空母カール・ビンソン、ミサイル駆逐艦2隻およびミサイル巡洋艦1隻を含む第1空母打撃群に対し、朝鮮半島周辺への進路変更を命じた。矢継ぎ早の示威行動で、さらなる政権の威信回復を狙う。散々やんちゃを重ねてきた金正恩は、米軍による限定ミサイル攻撃の可能性に怯えているだろう。

一連の軍事行動は大統領選で公約した「米国第一」や孤立主義に反するが、国内的には民心を和らげ、失政を挽回する時間稼ぎができ、対外的には米国の威信を回復できたという意味で、十分にもとが取れる選択だったのである。

■長期的にはリスクが高い

だが、米国内ではトランプ大統領の目を見張る成功は長続きしないとの論調が出ている。たとえば、一時的に政権の無能さから注意を逸らせても、4月下旬に予算を通せなければ、連邦政府が閉鎖される可能性が指摘されている。共和党内の財政保守派を敵に回してしまったトランプ政権は、民主党の一部切り崩しによって可決に必要な票数を確保したい考えだが、無理筋との声が大きい。

シリア攻撃は両刃の剣だ。シリア市民をアサド政権から守るとの大義は立つが、それならなぜアサド政権から逃れるシリア難民を米国は受け入れないかとの移民に対する同情の世論が高まる。その他の重要な経済・政治問題も、いずれ再浮上してくる。だが、時間稼ぎの後もトランプ政権に新戦略があるようには見えない。

対外的にも、アサド政権は反政府派への攻撃続行を表明しており、ミサイル攻撃の効果はなかったようだ。市民の殺戮が続けば、米国は再び国際法の根拠なしにシリアを攻撃しなければならなくなり、ベトナム・イラク・アフガニスタンに続いて地上軍投入を含む戦争の泥沼にはまる恐れがある。それが、シリアやロシアの狙いだ。

■むしろ中国・北朝鮮を利する?

米国が中東から抜け出せなくなれば、北朝鮮にとって軍事的挑発をますます増大させるチャンスとなる。そうなって困るのは米国や日本や韓国なので、中国はシリアや北朝鮮への支援を強めるかもしれない。米軍のシリア攻撃は、金正恩や習近平の大いなる救いになる可能性があるわけだ。

このように米国のシリア攻撃は短期的な大成功だが、一時しのぎが目的の、長期的な戦略を伴ったものではないため、この先トランプ政権の首を真綿のように締め上げていく第一歩となったように見えるのである。

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