ゴルゴ13、海外安全対策を指南
Japan In-depth / 2017年4月20日 22時30分
外務省を訪れたデューク東郷に外務大臣が任務を依頼、その理由を「あなたが臆病だから」と語る外相に、東郷が「わかった、引き受けよう」と承諾して第1話「外務省からの依頼」は始まる。このセリフ、ゴルゴ13の愛読者ならピンと来るはず。第28巻『スーパースター』にある。
《俺がうさぎ(ラビット)のように臆病だからだ……が……臆病のせいでこうして生きている》
■海外旅行者に登録呼びかける外務省
東郷は東京を皮切りに、企業の安全対策にアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなど11カ国を飛び回る。第2話からいよいよ本題に入り、外務省が2014年から始めた海外旅行登録「たびレジ」(注1)を取り上げる。
パキスタンのかつての首都カラチを舞台に、総領事館からのメール情報でハイデラバード行きを取り止め、爆弾テロの巻き添えになるのを回避した中小企業経営者一行のストーリーが展開する。ゴルゴ13がこう呟く。
《「たびレジ」が完璧であるというつもりはない……しかし、これが安全対策の第一歩だと……俺はそう思う。》
だが実際には、年間1700万人と言われる日本人海外旅行者で「たびレジ」登録者は160万人とまだ1割にも満たないという。これでは外務省がゴルゴ13の手腕にすがりたくなるのも無理もない。
■求められる安全対策意識
まだまだ「水と安全はただ」と考える日本人が少なくないということだろう。それでいて、いざ事が起きると政府の邦人保護の責任を追及してやまないのも日本人だ。もちろん国には国民の生命・財産を守る責任がある。しかし究極的には「自分の身は自分で守る」。そのために一人一人が安全対策意識と対応能力を向上させることは、結局自分のためでもある。
大企業と比べて安全対策が後手に回ったり、手薄になったりしがちな中小企業向けになっているが、対象は企業、個人を問わない。とは言え日本に存在する企業386万4000で大企業は1万1000社に過ぎない(2014年版「中小企業白書」)から、ボリュームゾーンでもあるのだ。
最近は官公庁が政策などにアニメやマンガ、映画といったソフトパワーを活用するケースが目立つ。外務省も、かつてイラクのサマーワ連絡事務所で、給水車に「キャプテン翼」の大きなシールを貼り、サッカーが大好きな子供たちに人気を博したことがある。しかし今回のように、毎回ストーリーを作り、完結の暁には単行本の刊行もするほどの取り組みは初めてだ。ゴルゴ13のおかげか、反響も上々らしい。
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