米軍事圧力が効かぬ北朝鮮
Japan In-depth / 2017年4月21日 9時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・米の軍事圧力に慣れ切っている北朝鮮。
・むしろ圧力は核・弾道弾開発を加速させる。
・経済援助による資本主義化が体制崩壊の近道。
北朝鮮の核・弾道弾開発が注目されている。核実験や発射試験の兆しを見てのことだ。
それに対し、米中ともに圧力を加えようとしている。米国は新政権が関与に舵を切った。中国も北に影響を及ぼせなくなったため、圧力でその行動を制約しようとしている。
だが、北朝鮮は圧力で言うことを聞くのだろうか?
核・弾道弾の開発に圧力は効かない。北は既に慣れており、むしろ支配体制の安定化にも利用している。その上で圧力を積みましてもむしろ核・弾道弾開発を進める結果に終わる。
北朝鮮問題を改善させるには援助しかない。資本主義の毒を入れ、金の力で心を汚すことだ。短期的な効果は見込めないが、戦争で北を滅ぼす選択肢がない以上、そうするしかない。
■北は圧力に慣れている
北朝鮮の慣れのため、圧力は効かない。北朝鮮は今までも圧力をかけられ続けているが、それに慣れた結果なんとも感じていない。この状況でさらに圧力をかけても北朝鮮には効かない。
米軍事圧力は朝鮮戦争から継続している。プエブロ号事件が示すようにかつては米艦は沿岸ギリギリまで接近していた。その後も米韓軍事演習では、北からすればいつも侵攻寸前の圧力をかけられている。
また、80年代以降は国際社会からの孤立にも耐久している。83年のラングーンでのテロや、その後の民主化と経済成長により、北は第三世界から距離を置かれている。91年には国連に南北同時加盟できたものの、これはむしろ韓国の地位向上の結果であり、北朝鮮はそのおこぼれにあずかったにすぎない。そして直後にはソ連崩壊と東側ブロック解体により、ほぼ味方はない。つまり指導者、政府・党・軍部、国民は圧力に耐え慣れている。いまさらそのレベルが上っても体制が倒れるとは感じていない。
そして、その経済・社会システムや政治も圧力を織り込んでいる。経済封鎖や国境封鎖があっても耐えられる、あるいは体制は倒れない仕組みができている。
つまり、圧力をかけられても北朝鮮は痛痒と感じないのである。
■圧力は利用される
そして圧力は国内支配体制の安定化にも利用されている。これも対北強硬政策が意味を持たない理由である。
現在の支配体制・統治政策は「外敵に対抗するため」に正当化されている。米国、韓国、日本、いずれは中国による侵略から国を守るため、強力な指導力が必要とされ、強大な軍事力を維持する必要があり、経済的困難は辛抱しなければならない。現体制や政策はそのような論理により成立し、維持されている。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプ再選で日本は「5つの悪夢」に襲われる 前回よりも思い通りにしやすくなる可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 14時30分
-
同床異夢の露朝新条約、危険な金正恩の「誤信」(上)
Japan In-depth / 2024年6月28日 11時8分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その4 中国とはディカップリングも
Japan In-depth / 2024年6月27日 19時0分
-
イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
-
トランプ前政権高官が米誌に寄稿、「米国経済を中国から切り離すべき」(米国、中国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月25日 0時20分
ランキング
-
1米国初の女性・アジア系大統領を目指すハリス氏、手腕には厳しい評価も
産経ニュース / 2024年7月22日 19時11分
-
2バイデン氏の撤退決断、米主要紙が評価 「勇気ある選択」「米国の最良の利益」
産経ニュース / 2024年7月22日 19時34分
-
3北朝鮮エリートの脱北ラッシュ、なぜ外交官なのか…海外生活で「目覚めた」
KOREA WAVE / 2024年7月22日 16時30分
-
4南シナ海で「屈服せず」 比大統領、緊張緩和模索も
共同通信 / 2024年7月22日 22時59分
-
5バイデン氏大統領選からの“撤退表明” トランプ氏「いんちきジョーは最悪の大統領」とSNS投稿
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 11時43分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください