イ・スンマン登場 金王朝解体新書 その2
Japan In-depth / 2017年5月3日 12時5分
世に言うモスクワ協定だが、これは朝鮮半島全土の民衆から猛反発を受け、なおかつ、半島にどのような国家を建設すべきか、という具体案において、米ソの思惑がかけ離れていたため、早々に頓挫してしまった。
沖縄も米国の信託統治領となったわけだが、そもそも信託統治とは、未だ「未開」の離島などを、国際社会に早く合流させるための、便宜的な手段とされている。長い文化的伝統を持つ沖縄や朝鮮半島にこれを適用しようとは、たしかにひどい話だ。
■韓国独立と北朝鮮樹立
1948年5月、国際連合の監視下において半島全土で総選挙が実施されたが、人口の少ない北部の住民は、これをボイコットしてしまう。理由は単一ではないが、
「ひとまず38度線以南だけで、民主的な独立国を樹立すべき」
と訴えたイ・スンマン派の優勢が伝えられたことが、おそらく最大のものであろう。
半島南部にも、この考え方に対しては、
「分断の恒久化につながる」
という反対意見があったが、総選挙の結果は、イ・スンマン派の圧勝。
かくして、韓国の独立が達成されたのである。
半島北部では、この時点ですでにキム・イルソンによる独裁体制が確立されていたのだが、南部でのこうした動きを見て、1948年9月9日、あらためて朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の樹立が宣言された。
朝鮮半島に二つの国家が出現したわけだが、内情はもう少し複雑で、南北ともに、分断は過渡的な状態であると考えていたのである。とりわけ北朝鮮政府は、建国の時点では首都をソウルと定め、ピョンヤンについては「臨時行政府」とわざわざ名付けていた。公式にピョンヤンが首都と呼ばれるようになるのは、1972年以降である。いずれにせよ、米国はイ・スンマン政権に後を委ねる形で、ひとまず朝鮮半島から撤退。
この経緯から、ひとつのことが読み取れる。米国はじめ第二次世界大戦の戦勝国は、大日本帝国による植民地支配から朝鮮半島を解放する、という理念をとなえていながら、その実は朝鮮半島の人々の自治能力など信用していなかった。モスクワ協定の内容を見れば、そのことは明白だろう。
こうした中で米ソの角逐が激しさを増して、やがて両陣営は、心配されていたヨーロッパ中央部ではなく、東アジアで激突することとなったのである。
(金王朝解体新書その1の続き。その3に続く)
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