「オレ様第一」から「公」の政治へ
Japan In-depth / 2017年5月27日 18時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・日米両政権が疑惑に揺れている。
・トランプ氏はロシアゲートで、安倍首相は加計学園問題を抱える。
・自分の利益を第一に考えるのではなく、「公」の政治を取り戻せ。
・揺れる日米政権
日米の政権がともに国民から疑惑の目で見られている。両政権のトップは疑惑を全面否定しているが、国民の間ではすっきりしていない。
深刻なのはアメリカのトランプ大統領だろう。事は2016年の米大統領選で民主党クリントン候補陣営がサイバー攻撃を受けたことに始まる。これが内部告発サイト「ウィキリークス」に暴露され、米情報当局はトランプ候補を有利にするためロシアが攻撃をしかけたと断定した。
その後トランプ・ロシア側の関係を捜査していた連邦捜査局(FBI)にトランプ大統領は不満を表明。5月9日にコミ―FBI長官を解任してしまった。これに対しFBI高官は「コミ―氏は幅広い支持を受けていた」と反論。野党民主党もトランプ氏の手法を批判し、株価も300ドル以上暴落した。
・大統領と司法の対決へ
このため米司法省は、ロシアとトランプ政権の不透明な関係を捜査する「特別検察官」を置くことを決定し、モラー元FBI長官を起用したのである。特別検察官は政権から独立した立場で捜査を行ない、幅広い裁量を持ち、捜査報告書は原則として司法長官に提出されることになっている。
米憲法では弾劾発議があり、議会で成立すれば大統領は罷免されることになるので強い権力を持つ。今回の場合、司法省が大統領の意向を無視する形で検察官の任命に動いたことになり、トランプ側は「政治に対する魔女狩りだ」と反発している。
かつてニクソン元大統領が1974年のウォーターゲート事件に関連して特別検察官の捜査を受けたが、下院の弾劾発議の前にニクソン氏が辞任したケースは有名だ。
・アメリカの親露政策に影響か
今回の疑惑は、大統領選挙中の民主党クリントン候補陣営へのサイバー攻撃や対露制裁緩和の密約などに関するものだ。FBIに代わり特別検察官がどこまで実態を明らかにできるかが焦点となるが、トランプ政権はロシアのラブロフ外相と何度も会談を重ねるなど対ソ政策を融和の方向に大きく転換している最中だけに捜査は難航しよう。今後の対ソ外交にも大きく影響する可能性もあるだけに結論が出るまで相当な時間がかかるとみられている。
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