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在日にとっての祖国とは 金王朝解体新書 その5

Japan In-depth / 2017年6月16日 0時0分

などと述べている(『僕は在日〈新〉一世』平凡社新書より抜粋)。

在日の多くは現在の北朝鮮の領域ではなく、半島南部にルーツを持つ人が多い。にもかかわらず、自分たちの伝統文化からは一度断絶され、あらためて北朝鮮が主導した民族教育によって言葉を身につけたので、そういうことになるらしい。

■  GHQも在日を監視対象に

話を戻して、日本を占領下に置いたGHQ(連合軍最高司令部)も、当初は在日について、軍国主義日本による植民地支配で生活基盤を奪われた被害者、と位置づけていた。

敗戦直後の闇市で、在日の不良グループがやりたい放題だったという話は、ヤクザ映画などを通じて伝承されてきたが、実はこういう背景があったのだ。

ところが朝鮮戦争が始まると、GHQは、

「(在日の多くが)共産主義者と手を組んだという事態は看過できない」

と見なすようになり、日本の警察も彼らを監視対象とするようになった。

アメリカン・デモクラシーというものは、反ファシズムであると同時に、本質的に反共なのであるが、戦後に日本において、一部の共産主義者や在日は、この点を見誤っていた。米占領軍を「解放軍」と呼んだかと思えば、ソ連こそが「労働者の祖国」であるとして、反政府暴動を企てたりしたのである。

在日の共産主義者も実際に火焔瓶を投げたりしているので、落ち度がないとはとても言えないが、占領政策における在日の位置づけが、きわめてご都合主義的であったことも事実だろう。さらに度し難いのは時の韓国政府で、1950年代まで、北朝鮮の国籍を選択した在日に対しては、入国すら認めていなかった。

■  在日のカネに目をつけた北朝鮮

しかしその後、日本の高度経済成長が始まり、その恩恵もあって金持ちになった在日が多いことを知るや、手のひらを返したように「コーヒャンタンムンダン(故郷訪問団)」への参加を呼びかけ始めたのである。お墓参りに来なさい、と。

前述のように、在日の多くは実は韓国にルーツをもっているので、「故郷訪問団」という名称自体は別におかしくないのだが、その実は観光客の誘致とあまり変わらず、彼らが落とすお金が目当てであった。

1950年代から60年代にかけて、北朝鮮が呼びかけた「帰還事業」の方は、日本でも比較的よく知られている。

「地上の楽園を不抜のものとするために、在日も参加せよ」

というキム・イルソン政権のプロパガンダを信じて、本来のルーツではない北朝鮮に渡った人々は、悲惨な運命をたどることとなった。

前出のヤン・テフン氏は、兵役を終えたから日本に私費留学し、そのまま定住の道を選んだ、本のタイトルにもある「在日新一世」だが、過去の在日の立場については、こう語る。

「北も南も、在日のお金に目をつけていただけなのだと思うと、本当に情けない話です」

今では朝鮮学校でも、韓国籍の生徒が半数近くを占めるようになっているし、在日を取り巻く状況もかなり変わってきてはいる。しかし、北朝鮮の独裁政権が世界秩序を一顧だにしないせいで、韓国籍の在日までが白眼視されるという問題が出てきていることも事実だ。

次回は、その北朝鮮における権力世襲の問題を取り上げる。

(本記事は、その1、その2、その3、その4の続き。その6に続く)

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