拡散するISの脅威 ASEAN結束
Japan In-depth / 2017年6月22日 8時51分
こうした事態に対応するためフィリピン、インドネシア、マレーシアは6月19日からフィリピン南部のスールー海周辺海域での3カ国海軍艦艇による共同パトロール、さらに3カ国空軍による共同哨戒飛行を計画している。
タイのプラユット首相は5月30日にマスコミに対して「タイ南部にISの関係者が潜伏していたり、事件を起こそうとしていたりするとの情報は確認していない」としてタイ国内にISは存在しないとの見方を明らかにしている。こうしたことから今回の会議にはタイは参加していない。
■インドネシアでもISへの懸念深刻
ISとの直接戦闘が続くフィリピンに次いで深刻なのはインドネシアで、フィリピン南部に地理的に近いスラウェシ島中部ポソの山中にはイスラム過激組織の秘密訓練キャンプがかつて存在し、そこにISシンパやイラク、シリアへの渡航を望む若者が参加していたことも確認されている。そのメンバーの一部がフィリピンに渡り、今回の戦闘に参加している可能性は高い。
リャクドゥ国防相は6月4日にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で「フィリピン国内には1200人のISメンバーがすでに潜伏している」としたうえで、マラウィで戦闘を続けるISないし別の過激組織に属するインドネシア人は38人いることを明らかにした。
インドネシア国軍、警察、入国管理当局などは現在スラウェシ島北部、カリマンタン島北部などを重点的に警戒して、テロ組織関係者の密入国、マラウィの戦闘から逃走してくるメンバーの発見、摘発に全力を挙げている。
特にインドネシア人の戦闘員は他のメンバーとともにインドネシア国内の支援組織を頼って脱出先として自国を目指す可能性が極めて高いからだ。
■今そこにあるテロの脅威
インドネシアでは5月24日にジャカルタ市内カンプン・ムラユで爆弾テロが発生、その後も国家警察隊テロ特殊部隊(デンスス88)による過激派の摘発、爆弾や武器の押収が続いている。それは依然としてインドネシアではテロが「今そこにある危機」として存在していることを示している。
インドネシア国家警察のティト長官は「ISが欧米諸国やロシアから圧力を受け、シリア、イラクから世界各地に分散化している」との見方を示している。これは東南アジアではフィリピン、インドネシア、マレーシアにISメンバーやその支持者が結集して新たなISの東南アジアの拠点作りとテロを計画中との見方を裏付けている。
もはやフィリピンだけでなく、東南アジア各国が直面する課題としてISとの戦いが現実のものとなっているのだ。
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