トランプ外交に翻弄されるな
Japan In-depth / 2017年6月23日 19時34分
■再び日米貿易摩擦も?
第三は日本をアジアの同盟国と位置づけ、尖閣問題などで時折り中国の対米貿易黒字の巨額さを取り上げ、アメリカ産品の購入増大や対米投資の増額を要求していることだ。
ちなみにアメリカの貿易赤字は、対中国赤字が3470ドルと断トツに多く、日本は第2位で689億ドル、ドイツが649億ドル、メキシコが632億ドルと続いている。
このため、一時は中国を為替操作国と断定し、4月に習近平主席が訪米した際に「貿易不均衡を是正する“100日計画”を策定することで合意した」と発表した。また中国だけでなく日本に対しても貿易不均衡の是正策を具体的に求めてくる可能性も強い。日米間では貿易摩擦が課題となることは久しくなかったが、日本の円安傾向などについて恣意的な動きと捉えられたりすると再び日米貿易摩擦が厄介な課題になってくるかもしれない。
このほかにもメキシコに工場を作り、安い労働力とメキシコからの対米輸出の安い関税率を利用した企業の行動についても、企業名をあげて批判してきている。トランプ大統領の何をしでかすかわからない行動が数多くあるだけに日本企業も戦々恐々といった体である。
■対北朝鮮外交でカヤの外にならないか
最も気になるのは、対北朝鮮問題だろう。偶発的な事件から戦争になる可能性は「50%以上」という専門家が多い。北朝鮮がアメリカまで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)、さらには核の開発に成功したら、とてつもない大きな“弱者の脅し”を仕掛けてくる可能性もあるわけで、その時のトランプ大統領の対応がシリア爆撃のような先制攻撃の形で出てきたりすると本格的な戦争となり、中国も日本も巻き込まれる危険があるわけだ。
このため、北朝鮮に強い影響力を持つ中国の出方が注目されているが、中国がどこまで北朝鮮に圧力をかけて思いとどませられるのか、読み取りにくいのが実情なのだ。
■米朝高官同士が直接接触!?
そんな中、アメリカは北朝鮮に人質となっているアメリカ人救出のため、ひそかに北欧でアメリカと北朝鮮の高官が接触したようだ。1970年代の突然のニクソン訪中による中国との和解を思い起こさせるが、トランプ大統領なら頭越しに有利なディール(取引)外交を行なう可能性も大きい。
ニクソン訪中で日本は対中国の外交を大きく変えたが、トランプ大統領と北朝鮮の接触に対し日本はどう向き合うのか。アメリカは対北朝鮮外交のカードをすべて机の上に出してあたるといわれているが、日本には手持ちのカードは少ない。結局、トランプ大統領に振り回されてついてゆくしかないのだろうか。せめて国民には日々の動きを正確に知らせて外交判断をしてもらいたいものだ。
■トランプ外交の法則性を読み取れ
トランプ外交は突然驚くようなことをしているようにみえるが、その本質はかつての価値観とは一線を画したアメリカ・ファーストの取引外交に真骨頂があると思える。トランプ大統領がいつ・どんなディールでアメリカ第一を勝ち取ろうとしているのか。当初言明していたことを変える可能性も多々あることもわかってきた。
対中方針なども随分とやわらかくなっている。口で厳しいことを言っておいて、相手が姿勢を変えたら柔軟な対応に変える幅もあるということも知っておいた方がよい。
その意味で、トランプ大統領の発言と行動、方針には常に目を凝らしておかなければなるまい。また、アメリカ・ファーストと日本の国益が合致しないときの方策も考えておくべきだろう。あわてて追随ばかりしていると、結局日本の信用を世界で落とすことになろう。
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