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ドゥテルテ比大統領就任1年 最大の試練

Japan In-depth / 2017年7月7日 18時0分

南シナ海問題では時に中国寄りの姿勢をみせたかと思えば、対中強硬発言に戻るなど中国政府すらやきもきさせるその融通無碍な姿勢で米国、中国を相手に独自外交を展開。その手腕にフィリピン国民は喝采を送り、支持率をさらに上げるなど順調なドゥテルテ政権の1年目の船出となった。

 

■最大の試練、テロとの戦い

ところが5月23日、事態は一変する。ロシア訪問中のドゥテルテ大統領にフィリピン南部ミンダナオ島の地方都市マラウィでイスラム系過激組織摘発作戦中のフィリピン治安部隊と過激組織との間で激しい銃撃戦が始まり、予断を許さない深刻な事態に発展したのだ。

ドゥテルテ大統領は同市周辺に戒厳令を布告すると同時にロシア訪問を切り上げて急きょ帰国。陣頭指揮で事態解決に臨むものの、掃討作戦が容易でないことに気が付くのに時間はかからなかった。というのもイスラム組織「アブサヤフ」に加えて新興の武装組織で中東のテロ組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う「マウテグループ」だけでなく、他のフィリピン武装勢力、東南アジア各国のみならず中東からのISのメンバーやシンパがフィリピンに密入国して戦闘に加勢していることが判明したからだ。

ドゥテルテ大統領は「もはやこれはフィリピンに拠点を築こうとしているISとの戦い、つまり国際的なテロとの戦いだ」との認識を示したのだった。

当初は戒厳令1カ月の6月23日、イスラム教の断食月の終わる6月25日、そして大統領就任1年の7月1日と、作戦終了のメドを国軍は明らかにするものの、事態は一向に収束の方向に向かわず、完全に膠着状態に陥っている。

米国や中国からの武器供与、資金提供、オーストラリアからの哨戒機参加、インドネシア、マレーシア、フィリピン3国による海上と上空の警戒、監視活動と国際的な協力を得ながら掃討作戦は続けられている。

 

■政権最大の試練に直面

ドゥテルテ大統領が布告した戒厳令は期間が60日に限られているものの、地域の拡大、期間の延長は可能だ。戒厳令の状況では治安組織に強力な権限が委ねられ、マルコス政権の戒厳令下では多くの人権侵害事件が発生した。このため今回の戒厳令に関しても下院議員らが「憲法違反」であるとして裁判所に訴訟を起こす事態も起きている。

このまま戒厳令がずるずると続く状態は、ドゥテルテ大統領にとっても好ましいことではないが、掃討作戦の終結にメドがつかないことで焦燥感を強めている。6月12日の独立記念式典に欠席、その後約1週間に渡って公の席に姿を現さず「健康不安説」が流れる事態も起きた。

72歳という年齢を勘案すれば多少の休養が必要なことは事実だが、精力的に動き回り歯に衣を着せない発言がトレードマークだったドゥテルテ大統領だけに最近の動向は「ミンダナオの戦闘が相当頭痛の種になっているのは間違いない」(フィリピン人記者)という状況だ。

独自路線を突き進んできたドゥテルテ大統領だが就任2年目に入り、ミンダナオ島での戦闘の長期化が心身に予想以上の負担と疲労を与えると同時に、政権としての最大の試練となっている。国民の多くはそれでもドゥテルテ大統領の手腕に大きな期待を寄せており、この難局をどう切り抜けるのか、ドゥテルテ流を固唾を飲んで見守っている。

トップ画像:ドゥテルテ比大統領と歩兵師団

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