ラオスで中国人襲撃事件 高まる反中感情
Japan In-depth / 2017年7月23日 18時0分
ラオスは社会主義国で曲折はあったものの、現在は中国とは極めて良好な関係を保ち、インフラ整備や資源開発などで中国の影響力、存在感が年々増大している。しかし、中国がラオスで行っていることは開発協力とか経済協力とは呼べない、一方的、高圧的なものであることにラオス政府、国民も次第に気が付き始めている。
2015年2月にはラオス北部の中国資本が入ったバナナ農園で有害物質が入った農薬を使用していたことが原因で労働者の農民に深刻な健康被害がでたほか、土壌汚染も進んでいることが明らかになった。さらにこの農園ではライフル銃などで武装した中国人がラオス人農民を安価な賃金で強制的に働かせていたことも判明、ラオス政府が事態調査に乗り出し農薬禁止を決めた。ラオスの法律では外国人は武器を所持できないことになっており、労働者の人権侵害も問題化した。
中国資本は農園のほかにもメコン川のダム建設や高速鉄道建設などインフラ部門に主に投じられている。しかしその手法は、たとえば高速鉄道建設に関しては中国本土から大量の労働者が送り込まれ、その宿舎も中国が建設、賄い人、付近にできる中国料理店など全てが中国人で、ラオス人の雇用創出や地元への経済波及効果にはほとんど繋がっていないのが実状だ。
■インドネシアでも物議醸した中国流
こうした実態はインドネシア・ジャワ島東部マドゥーラ島での中国資本による橋梁建設現場でも起きていたことで、「技術力や品質」を理由にして材料、工具、機械すべてを中国が持ち込み、単純作業の労働者まで派遣して工事を進めたのだ。インドネシア政府もこうした中国流手口に気が付いてから以後は、中国が関係するプロジェクト契約に際しては、中国人を雇用するのか、地元のインドネシア人を雇用するのかなど細かい項目まで協議で詰めるようになったという。
ジャカルタ市内幹線道路に設置されたバス専用レーンを走る「トランス・ジャカルタ」のバスも競争入札で廉価を提示した中国製バスを市当局は大量に購入したものの、エンジントラブル、発火などの故障が相次いだ事例もある。
■中国の「一帯一路」への見極めを
ビエンチャンに2015年に大型商業施設「ビエンチャン・センター」がオープンしたがこのモールには「中国銀行」が入っていることからも一体誰のためのショッピングモールなのか、市民も首をかしげているという。
さらにタイ、ミャンマーと国境を接する北西部のゴールデントライアングル地区のラオス領には中国資本のカジノが建設されが、客の大半は予想通り中国人旅行者。周辺のホテル、飲食店、商店もほとんどが中国人経営で飛び交う言葉は中国語で中国人民元が使われて、売春や麻薬に関連する中国マフィアも進出するという特異な空間が広がっている。
インドネシアの例でもいえることだが、中国が掲げる経済圏構想である「一帯一路」では東南アジアは重要な位置を占めている。そのため、これまで以上になりふり構わない、そして地元や相手国の利益や恩恵を顧みない独善的手法で中国が「進出」してくることは確実だ。
中国の経済援助が喉から手が出るほど欲しい東南アジア各国としては中長期的視野に立って、中国の真の狙いを見極めるとともに、毅然とした対応が求められてくる。腹いせや意趣返しで中国人を襲撃したりすることでは問題の解決はみえてこないのだから。
トップ画像:ラオス・サイソンブン県 Photo by John Ruffalo
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