南北経済格差と拉致問題 金王朝解体新書その9
Japan In-depth / 2017年8月4日 18時0分
停戦以降も、韓国内に工作員を送り込む活動は継続されたが(念のため述べておけば、韓国も北に多数の工作員を送り込んできた)、経済格差が生じたせいで、思わぬ不覚をとる事態が生じるようになってきたのだ。
たとえば、首尾よく潜入したものの、地元住民に目撃されてもすぐに逃げなかった、というケース。どういうことだ、と思われたであろうが、北の感覚では、普通の農家に電話がある、ということが考えられないため、すぐに通報される事態を想定できなかったのだ。
こうしたことから、韓国や日本の内情に詳しい人間から、詳細な情報を得ないと工作員の養成に支障をきたす、と考えられるようになり、さらに、日本へ工作員を送り込むには、実在する日本人の戸籍などを利用するのがよい、との発想が拉致という手段に結びついたと考えられる。
これについては、1976年にキム・ジョンイル(金正日)が、工作活動強化のために拉致を推奨するような発言をした、との脱北者の証言がある。
1977年に拉致された横田めぐみさんの場合は、海岸から潜入していた工作員を目撃してしまった「出会い頭」であったようだが、北朝鮮で洗脳され、前述のような工作員の指導に従事していたとされる。そうであれば、日本に潜入している工作員の顔を知っているので、北朝鮮側としては絶対に帰すわけには行かない。そこで、すでに亡くなった、などという嘘の情報がもたらされたわけだ。残念ながら(?)、日本のDNA解析技術の情報が向こうにはなかったため、遺骨のすり替えというトリックはすぐにバレたが。
他にも、特定失踪者の中に、複数の印刷業関係者がおり、失踪の時期や場所がいずれも近くて不自然であること、彼らが失踪した数年後、北朝鮮が大量の偽ドルを製造している、との情報がもたらされたことから、日本の印刷技術を「密輸入」するための拉致だったのではないか、と疑われているケースもある。
拉致問題の解決なくして、日朝の国交正常化なし。これは大原則であるとしても、そのための手段は、制裁強化なのか話し合いなのか、様々な選択肢を慎重に考える必要があると思う。これは国家犯罪で、一種の人質事件である。まずは人命優先、そして臨機応変の解決が求められる。
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