日米、2+2で「核の傘」保つ
Japan In-depth / 2017年8月19日 9時17分
小野寺氏はすでに一度、防衛大臣を務めているから、本来の経験や見識を踏まえるように、円滑に発言を進めた。河野氏も落ち着いた身のこなし、要を得た発言だった。就任前にはいろいろ懸念もあったから、この場でのパフォーマンスは、なかなかやるではないか、という印象だった。
日米合意の内容は予想どおり、まず北朝鮮の暴走をどう抑えるか、対話のための対話はせず、いまのまま圧力をかけ続ける、軍事的な手段も排除しない、という厳しい日米連携の対応だった。中国の南シナ海、東シナ海でのルール無視の領土拡張の動きへの日米共同の反対も表明された。
そして肝心の日米同盟に基づく両国の安全保障協力ではアメリカ側の日本防衛の誓約が強調された。とくに中国が侵略を図る尖閣諸島に対してはアメリカ側から日米安保条約第5条の日米共同防衛の対象になることがはっきりと言明された。中国軍が尖閣に攻めてくれば、アメリカは日本と共同して防衛にあたるという誓約だった。
こうした諸点は日本側がトランプ政権に求めていたことのほぼすべてだともいえよう。そのかわりに日本も日米同盟に基づく共同の防衛努力ではこれまでよりも大きな役割を果たすことに合意をしたという。安倍政権とトランプ政権の防衛協力はこれで大枠がこれまでにも増して堅固に合意された、ということだろう。
しかしとくに注目されたのはアメリカの核抑止の日本への誓いだった。アメリカのいわゆる「核の傘」である。北朝鮮が日本への核攻撃をも辞さないという危険な言動を誇示する現在、その核の冒険や威嚇を抑えつけるアメリカ側の核抑止力をいざという際には日本にも適用するという姿勢は日本の防衛には非常に重要だといえる。
マティス国防長官は「アメリカが安保条約第5条に基づき、拡大抑止の誓約をも含む日本の防衛にあたる姿勢には揺らぎがない」と述べた。「拡大抑止」とは「拡大核抑止」のことである。
他国が核兵器での攻撃や威嚇をしてきた場合、こちらも必ず核兵器での報復の反撃に出るという意図と能力を顕示する。その姿勢が相手の核兵器の行使や利用を抑えつける。これがいわゆる核抑止の機能である。その核抑止が単に核保有国の自国だけでなく、同盟国にまで供与される場合、「拡大核抑止」と呼ばれる。つまりはアメリカの日本への「核の傘」である。
小野寺大臣も「私たち日米4閣僚はアメリカの日本防衛に対する拡大抑止の誓約の不動の存続の重要性を再確認した」と述べた。いざ北朝鮮でも、中国でも核兵器を日本への威嚇や実際の攻撃に使うという姿勢をみせれば、アメリカの核戦力が日本を守る、という意味である。
この点は日本側の報道ではあまり大きくプレイアップはされないだろう。だが実際には超重要な日米協力の核心部分なのだ。この「核の傘」誓約は日本国内で核兵器禁止条約への日本の賛同を求める反核勢力にとっては守られたのだった。
トップ画像:日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)2019年8月17日米ワシントンDCにて
左から、小野寺五典防衛大臣、河野太郎外務大臣,レックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官
出典)外務省HP
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