不毛な政争に終止符を スペイン・カタルーニャ地方独立問題(下)
Japan In-depth / 2017年10月1日 18時0分
これに対してスコットランド独立が達成されれば、新たにEUに復帰しユーロに加盟する、という選択肢があるわけだ。
もちろん、独立即新加盟、などという簡単な話ではないので、2014年に実施された住民投票で、僅差ながら独立は否決されたことは記憶に新しい。ただ、英国がEUから離脱するという国民投票の結果を受けて、あらためて独立論が盛り上がりを見せていることは、あわせて知っておきたいところだ。
これに引き替えカタルーニャは、スペイン国内では例外的に観光業・製造業が好調だが、それは、ユーロ圏だからこそ投資マネーが集まる、という要素を抜きには考えられない。仮にカタルーニャが独立を宣言した場合、EUが「新たな一国」として留まることを認めるとは考えにくいので、経済的デメリットは大変な規模になる。
前項で私は、現在スペインのGDPのおよそ20%はカタルーニャが稼ぎ出しているのに、中央政府に納める税金と、還付される地方交付金がまるで釣り合っていないことこそが、独立運動の底流なのだと述べた。
事実、州政府からの改善要求に対しても、ラホイ首相は、
「スペイン全体の発展のため、税制の枠組みを見直す考えはない」などと、木で鼻をくくったような回答をした。
これは、かつてカタルーニャの大部分の自治体が可決した「自治憲章」が、憲法裁判所において違憲と判断されたことから、「独立宣言など、口先だけだ」と決めつけているのだと、衆目が一致している。
たしかに今次の住民投票についても、ラホイ首相は、憲法裁判所に提訴して無効化する考えを、早々と表明している。
とどのつまり、政治家同士の意地の張り合い(不都合が生じた場合には責任のなすり合い)が、問題を複雑にしてしまっただけなのである。
もうひとつ、カタルーニャの住民は、マドリードを中心とするカステーリャの人々から蔑視されてきた、という「歴史認識」も、今ではあまり説得力を持たなくなってきている。
たとえば、カタルーニャではサッカーのスペイン代表にあまり関心を示さない、などと言われてきた。端的に言えば、あれは所詮カステーリャのチームだと思われていたのだ。
ところが、2010年ワールドカップ南アフリカ大会において、スペインを初めて世界一の座へと導いたチームは、
「バルサ(FCバルセロナ)プラスアルファ」と称される編成であった。先発メンバーの過半数がバルセロナで活躍する選手だったのである。本当に独立したら、レアル・マドリードに一泡吹かせる楽しみもなくなるではないか、という声も実際に聞かれるくらいだ。
したがって、今もっとも問題視すべきは、経済からサッカーまで、今やスペインをリードしていると言って過言ではないカタルーニャが、自治の拡大や財政面での優遇を求めることを、中央政府は「もっともなこと」と受け止め、真摯に対応することだろう。
独立派も中央政府も、頭が古くて、いささか大人げない。これで、カタルーニャの人々の間に、妙な対立感情が持ち込まれたりしたら、気の毒だという他はない。10月1日の投票結果の如何に関わらず、ちゃんと大人の解決をして欲しいものだ。
(上の続き。全2回)
トップ画像:カタルーニャ地方独立を訴えるデモ 2010年 flickr/Merche Pérez
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