医師不足対策は看護師の有効活用
Japan In-depth / 2017年11月7日 0時53分
東京には看護師はいないが、医師が多い。悲惨なのは千葉県や神奈川県だ。医師以上に看護師が不足している。この地域で団塊世代が一斉に高齢化する。厚労省は在宅医療を推進したいようだが、この状況では難しい。
かくの如く、我が国の医療現場が抱える問題は多様だ。地域の実情に適合した個別解が必要だ。ただ、一般論として、我が国は医師が少なく、看護師が比較的多い。医師不足対策で考えるべきは、看護師の有効活用だろう。これまで、このことはあまり議論されてこなかった。
では、福島県はどうなっているだろう。意外かもしれないが、看護師と医師の比は6.3。西日本と変わらない。実は福島を含め東北地方は、医師は少ないが、看護師は比較的多い。人口当たりの看護師数は、中国地方とほぼ同じレベルだ。
福島では、医師の業務独占を緩和し、ナース・プラクティショナーのような資格を認めれば、医師不足の緩和に役立つはずだ。ナース・プラクティショナーとは上級看護師資格で、一定のレベルの診断や治療を行うことが許されている。医師と看護師の中間職だ。
米国でナース・プラクティショナーが発達したのは、医師と比較して看護師が多かったからだろう。ナース・プラクティショナーが活躍する米国の看護師と医師の比は4.0。看護師の有効活用を考えた自然の帰結である。福島が特区としてナース・プラクティショナーを解禁すれば、「我こそは」と思う看護師が、活躍の場を求めて、やってくるかもしれない。
高齢化が進む地方では、在宅ケアのニーズは高まる。この分野でも看護師は活躍できそうだ。その際に問題となるのは規制だ。
私は、訪問看護ステーションの開設要件を緩和すればいいと思う。現在、新規開業には常勤換算で2.5人の看護師を確保しなければならないが、1人開業を認めたらどうだろう。自宅をオフィスに、全て自分でやれば、初期費用は格段に下がる。独立心旺盛な若手看護師が、地域医療に進出するはずだ。競争はサービスのレベルを向上させ、コストを下げる。
厚労省は、医師不足対策として、若手医師の地方勤務の義務化にご執心だが、この施策は何の根拠もない机上の空論で、おそらく実効性はない。
医師の総数が足りなければ、どんなことをしても問題は解決しない。厚労省が主導すれば、厚労省にとって優先順位が高い病院に優先的に医師が配置されるだけだ。
霞ヶ関で仕事をする高級官僚が、地域のニーズを十分に把握できるはずがない。もっと現場に裁量権を委ねるべきだ。医師不足対策の根本的な対策は、医師の養成数を増やすこと。ただ、それには時間がかかる。すぐにできるのは、既に育成した専門職の有効活用だ。地域の医師不足対策には、看護師の活用も含めて、幅広い視点で考えるべきである。
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