軍事オプションと拉致問題
Japan In-depth / 2017年11月23日 19時0分
日本から物的支援を得るため、また日米分断を図るためといった理由から、今後、北朝鮮が一部の拉致被害者を返してくることはあるかも知れない。しかし、全被害者の帰還を実現するには、北の現政権を倒す以外にはない。
■金正恩政権崩壊のカギ
そのカギとなるのは、率直にいってアメリカの軍事力である。金正恩政権崩壊のもっとも望ましいシナリオは宮廷クーデター、あるいはジンバブエの独裁者ムガベに対して起こったような軍事クーデター、すなわち内部崩壊だ。
しかしアメリカの攻撃が真に差し迫った状況にならなければ、金正恩周辺が、失敗すれば家族もろとも過酷極まりない運命に晒されるリスクを冒してまで立ち上がることはないだろう。実際に攻撃が始まり、幹部層に死者が出るまでクーデターは起きないと見るべきかも知れない。
その点、安倍首相が「すべての選択肢がテーブルの上にあるというトランプ大統領の立場を一貫して支持する」、すなわち軍事決着を含めて支持するとの立場を明確にしているのは極めて正しい。
▲写真 日米首脳会談 2017年11月6日 出典:首相官邸
米軍が朝鮮半島で作戦を展開するに当たって、在日米軍基地を自由に使えること、日本の後方支援を受けられることは決定的要素となる。他の友好国が発するであろう一般的な支持表明やモラル・サポートとは次元が違う意味をもつ。
▲写真 在日米海兵隊と陸上自衛隊の合同研修 2017年11月9日 flickr:在日米 海兵隊
日本の首相が、米軍は有事に当たって日本のフルサポートを受けるとの趣旨を明示することで、アメリカの軍事オプション発動という圧力に一段の信頼性、信憑性が加わるのである。
北朝鮮の核ミサイルの脅威は、米国の中枢部に壊滅的被害を与えうる段階に達しつつある。距離的に近い日本にとって事態はより深刻と言える。
経済制裁だけで北の核ミサイル開発をとめられたと判断すれば、米国側の軍事オプション発動はないだろう。制裁の効果は端的に、今後、北朝鮮が長距離ミサイルの発射実験をどの程度成功させるかで測られることになるであろう。
さらなる実験が行われなかったり、あるいは空中爆発や途中落下などの失敗が続いたりするようなら、「制裁が功を奏しているかも知れないから、もう少し様子を見よう」となるはずだ。逆にロサンゼルスやニューヨークを越える飛距離を出して成功という結果となれば、軍事オプション発動の流れになるであろう。
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