トランプ氏、露ゲート隠しか 外交大失策
Japan In-depth / 2017年12月13日 10時34分
エルサレムの帰属が未解決である以上、米国を含む各国が大使館をテルアビブからエルサレムに移転させることはなかった。多くの米国大統領候補が選挙戦中に大使館移転を公約したが、約束が履行されることはなかった。この問題は余りに機微で和平交渉の最終段階でしか解決出来ないと考えられたからだ。
〇欧州・ロシア
14日に欧州理事会が恐らく今年最後の会合を開く。議題は英国のEU離脱とEUROなど経済問題だそうだが、先週とは打って変わって、欧州はもうクリスマス休暇モードではないのか。その唯一の例外がドイツで、15日に社会民主党が会合を開く。メルケル首相のCDUとの大連立をどうするか、そろそろ決める時なのだろう。
しかし、これで大連立となれば、今まで連立しないと言ってきた連中はどう説明するのか。連立政権では弱いパートナーの方が埋没する。日本の例を見ても、それは明らかだろう。だが、そんなこと初めから分かっているはず。今回の連立の行方はドイツの内政を大きく左右しかねないので、年末まで要注目だ。
また、14日は恒例のプーチン大統領による記者会見がある。もう、次期大統領選への出馬を発表しているから、今回は事実上選挙戦の始まりといっても過言ではない。それにしても、こんな選挙に対抗馬として一体誰が出馬するのだろう。勝ち目はないし、下手に健闘すれば、命すら危ない。ロシアとは誠に不思議な国である。
〇東アジア・大洋州
13日から韓国大統領が訪中する。同日ミャンマー大統領が訪日する。15日に国連安保理が北朝鮮問題で閣僚級会合を開く。議長国は日本で、河野外相が仕切るのだろう。恐らくこんな仕事ができるのは河野外相ぐらいだろう。パーフォーマンスとはいえ、やるとやらないとでは雲泥の差だ。
〇南北アメリカ
トランプ政権は今回の首都認定決定でもエルサレムの帰属は未決のままと主張するが、パレスチナ、アラブ、イスラム教徒にとっては米国の裏切りとしか映らない。この決定は米国外交上の大失敗であるだけでなく、中東地域の混乱と米国という国家のクレディビリティ(信用)失墜に拍車をかけるだろう。
トランプ氏ほど、米国外交上の国益より国内支持者への公約実現を優先した大統領はいなかった。現在米国内で進行しつつある「ロシア・ゲート」関連捜査との関係もあるのだろう。いずれにせよ、この決定が米国の国際的指導力に与える悪影響は計り知れない。今頃高笑いしているのは、ロシアと中国とイランの指導者ではなかろうか。
〇中東・アフリカ
中東では既に多くの抗議運動が発生しているが、今のところ、予想されたほど激しくはないようだ。これが「嵐の前の静けさ」なのか、このまま「不発」に終わるのかは、現時点では分からない。今言えることは、欧州などでテロが再発しかねないこと、穏健アラブ諸国で混乱が起きかねないことぐらいだろう。
〇インド亜大陸
インド外交が絶妙のバランス感覚を発揮している。11日にはニューデリーで露中印外相会談が、12日には日印豪の外相が、それぞれ開かれるのだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
TOP画像:エルサレムの嘆きの壁の前で祈りを捧げるトランプ大統領 出典)Flickr The White House
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