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北朝鮮漂着漁船に工作員はいない

Japan In-depth / 2017年12月29日 14時6分

▲写真 朝鮮人民軍第4回水産部門熱誠者会議の参加者と記念撮影を行った金正恩氏(2017年1月1日付) 出典:노동신문(朝鮮労働新聞WEBサイト)

今年は生存者が多く発見されているのが特徴だという。26年4人、27年1人だった生存者が、今年は松前小島の10人を含め11月以降で5隻42人の生存者がいた。このうち3隻24人は、大和堆の周辺海域で救助されている。

漁業利権が朝鮮人民軍に属し、漁船も漁夫も軍の指揮下にあり、生存者が多かったことから、漁民の中に工作員が紛れ込んでいるのではないかとの報道が多くなされている。確かに一部の漁民が松前小島に接岸し、避難小屋の設備や備品などを窃盗していることから、悪質さが目立つために、工作員ではないのかという疑問が起こるのは当然のことである。

しかし、工作員が悪事を働き警察に逮捕されていては任務が遂行できない。できることとしたら、沿岸警備の不備を突き日本の善良な人たちを怖がらせることぐらいである。またこっそり上陸したとしても、日本語が堪能で日本の地理や事情に詳しくなければ目的地にたどり着くのさえ困難だ。1年も間隔をあければ日本の交通状況すらずいぶんと変わる。だから工作員の上陸には必ず案内人が必要となる。日本に定住し日本の諸事情に通じているか、よっぽど頻繁に往来していないと、上陸したところで身動きが取れなくなる。

また北朝鮮工作員を漁民に変装させて命がけで送り込む理由が見当たらない。遭難して命を落とせば任務は遂行できないからだ。また海上で日本の警備艇に発見されれば、あのようなボロ船では逃げることもできない。工作任務は隠密裏にそして確実に遂行してこそ工作である。正体をさらけ出し偶然を頼りにしてイザという時に逃走すらできないようでは工作どころではなくなる。

工作員はエリートである。北朝鮮とて相当な投資をして一人前にしている。また工作員を送り出す戦闘工作員は特殊訓練を受け戦闘能力を備えている。工作船も最新鋭の高出力エンジンを装備していて、いざという時には日本の警備艇を振り切る能力を備えている。以前工作船を追尾した海上保安庁の警備艇が振り切られたことがあるぐらいだ。

▲写真 海上保安庁との共同訓練で不審船を追跡する海自ミサイル艇「うみたか」 出典:防衛省

今回の漂流した漁船の中には必ず当局の監視員が乗船しているので、これらの人間が日本の対応や沿岸の警備状況を当局に報告することはあるかも知れない。だがそういう行為は工作員の仕事ではない。警戒心を高める必要はあるが過剰な認識は対応を誤らせる。

北朝鮮漁船の漂着で今後日本が対備しなければならないのは、沿岸警備の徹底と国民安保意識の向上、そして朝鮮半島有事の際の難民にどう対処するかであろう。また日本の中に潜伏する工作員を一人でも多く摘発することである。朝鮮半島有事の際、日本の中に工作員が100人潜伏していても相当な破壊工作ができるからだ。

トップ画像:日本沿岸に漂着した北朝鮮のものと思われる不審船 出典 twitter:首相官邸

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