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中長期的な社会保障・税制の姿示せ【2018:財政】

Japan In-depth / 2018年1月3日 18時0分

なぜ、財政健全化の旗を降ろしてはいけないのか。それは、社会保障費の増大が今度も財政を圧迫するためである。今回の2018年度予算では、社会保障関係費が過去最大の33兆円に達したことが一つの話題となったが、国と地方の公費や保険料で賄う社会保障給付費は約120兆円に達する勢いである。

このうち、年金は約60兆円、医療は約40兆円、介護は約10兆円であるが、社会保障給付費は、ここ10年ほどの間で、消費税1%の増税分に相当する毎年平均2.6兆円のスピードで増加している。特に、団塊の世代が75歳以上となる2020年度から25年度において、医療費や介護費が急増することが予測されている。

▲写真(イメージ) 出典:Pixabay

医療費や介護費の急増は、国が負担する公費(=社会保障関係費)の増加を通じて、日本財政を直撃する。例えば、65歳から74歳の前期高齢者一人当たり医療費55.4万円のうち国が負担する公費は約7.8万円であるが、75歳以上の後期高齢者一人当たり医療費90.7万円のうち国が負担する公費は約5倍の35.6万円である。

また、前期高齢者一人当たり介護費5.5万円のうち国が負担する公費は約1.5万円であるが、後期高齢者一人当たり介護費53.2万円のうち国が負担する公費は約10倍の14.5万円である。

▲写真(イメージ)出典:Pixabay

つまり、いま一人の前期高齢者がさらに歳をとって後期高齢者になると、医療費・介護費で国が負担する公費は40.8万円増加する可能性を意味する。このため、75歳以上の人口増加に伴って医療・介護費には膨張圧力が加わる。

では、75歳以上の人口はいつまで増加するのか。国立社会保障・人口問題研究所の平成29年人口推計(出生中位・死亡中位)によると、75歳以上の人口がピークとなるのは2054年である。このとき、75歳以上の人口は2449万人で全人口の24.9%、つまり4人に1人が後期高齢者となる。2017年の後期高齢者は1749万人(全人口の13.8%)であるため、38年間で700万人も増える。

厚労省の「社会保障に係る費用の将来推計について《改定後(平成24年3月)》(給付費の見通し)」では、2015年度で約50兆円の医療・介護費は2025年度に約75兆円に膨らむと予測している。

2018年度予算の編成では、薬価は引き下げる一方、診療報酬は引き上げており、社会保障関係費の伸びを5000億円に抑制するという数字合わせに終始してしまった感も否めない。

日銀の異次元緩和で長期金利が抑制でき、財政規律が緩みつつあるが、日本財政は厳しい。東京オリンピックが終了する2020年以降では、日本経済や財政を取り囲む環境や景色は激変するだろう。

▲写真 新国立競技場完成予想図 出典:日本スポーツ振興センター

2020年代前半のプライマリーバランス黒字化達成に向けて、増税判断をしっかり行う必要があることはいうまでもないが、2018年に予定する財政健全化フレームの見直しでは、中長期的な社会保障・税制の姿を示しつつ、一段踏み込んだ改革案の検討を期待したい。

トップ画像(イメージ):出典 Pixabay

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