バスクを参考に解決の道探れ カタルーニャ独立問題(下)
Japan In-depth / 2018年1月19日 20時4分
この背景には、同じスペイン語圏であるキューバにおける武力革命の成功が、独立を願う住民感情を大いに盛り上げ、かつ先鋭化させたことがあると言われている。
▲写真 IRAの戦闘員 出典:CAIN (Conflict Archive on the INternet) - University of Ulster.
1975年にフランコが死去し、王政復古が行われたが、今度は1978年に制定された新憲法で、バスクを自治州と認める一方、バスク人をスペイン人として扱うことになったため、話がややこしくなった。
この、ETAによる反政府テロの被害だが、なかなかすごい。治安部隊だけでも、グアルディア・シビル(直訳すれば民間防衛隊だが、国防省に属する治安部隊で、他国の武装憲兵隊に相当する)の203名を筆頭に、スペイン・フランス両国にまたがって計486人が殺害された。民間人の死者も343人に達する。ETAの側も、治安部隊の攻撃によっておよそ400人が死亡。4000人以上の負傷者と3万人近い逮捕者を出した。
冷戦が終結し、もともと彼らが手本とした北アイルランド紛争が終息を見た後も、ETAはテロを継続したが、2006年までに「コマンド部隊」のほとんどが逮捕され、壊滅状態となった。かくして2011年、ETA側からの申し出により、停戦が成立する。
▲写真 2011年停戦を発表するETAメンバー 出典 flickr:UKBERRI.NET
このように述べると、いかにも治安部隊の勝利のように思われるかも知れないが、実際はそこまで単純な話でもない。バスク地方は、前述のようにスペインとフランスにまたがり、かつ大西洋に面しているという地の利があって、19世紀以降、工業が発展し、実はスペイン国内においても、かなり豊かな地方なのだ。この点は、カタルーニャとよく似ている。
その分、近隣の地域から職を求めて移住してくる人が多く、現在スペイン国内に限っても、バスク地域の住民の過半数はバスク以外の出身者だという。それだけに、バスク独立が直接的に自分たちの利益にはならない、と考える人が多いわけで、テロリストの支持基盤がどんどん弱体化して行ったのである。
加えて、独立派も一枚岩ではなかった。これまたカタルーニャと似た状況だが、バスクの場合は、こうした党派間の争いにまで暴力が持ち込まれ、内ゲバまで起きていた。なおかつ、ETAのテロに対抗して、極右派のテロ組織も登場し、爆弾などで多数が巻き添えとなった一般市民からは、「独立の大義名分より、自分たちは命と生活が大切だ」という声がわき起こるに至った。もっともな話ではないか。
ひるがえってカタルーニャの問題を再び見てみると、独立派も現在のところ、暴力に訴える考えはなさそうだ。そうであれば、中央政府がもう少し柔軟な対応をして、独立派の要求のもっとも基本的な部分、具体的には独自徴税権の拡大について、誠実な話し合いのテーブルに着くべきであろう。地域住民の声を無視した強権の発動は、暴力と同列であると私は考えるが、どうだろうか。
(この記事は「弱い指導者」の弊害 カタルーニャ独立運動(上)のつづきです。全2回)
トップ画像:Euskadi Ta Askatasuna(略称ETA)バスク祖国と自由 バスク地方の分離独立を目指す民族組織 出典/flickr:Montecruz Foto Eguneroko borroka
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