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デンマーク 広がる電子化の波

Japan In-depth / 2018年3月20日 19時0分

▲写真 スーパーマーケット店内にて(Dankortアプリでも支払い可能)撮影:田中亜季

シニア層でも現金を持ち歩く人は少数派だ。デンマーク中央銀行のデータによれば、70-79歳世代の電子決済使用率が約60%で、お財布の中に18,000円以上の現金が入っている人々は15%だ。ちなみに30歳までの若者世代の約70%は、お財布の中に1800円以下の現金しか入っていない。現金使用率が低くなると、ATM台数も減少する。国内のATMの設置数は2007年に3000台を超えたが、2016年時点では2300台まで減少している。

▲写真 ノアポート駅前ダンスクバンク(中心街以外ではATMはあまり見かけない)撮影:田中亜季

 

■ 減らない犯罪率

しかし、現金使用率が減少したからといって犯罪率は低下していない。詐欺や強盗が減った代わりに増えたのがフィッシング犯罪詐欺である。AL銀行のデータによると、現金の強盗犯の数はここ10年間で9分の1になっている。その一方で、デンマーク警察の報告によると、2009年から2016年にかけてフィッシング詐欺やスキミングなど、カードに関する犯罪が60%増加した。

銀行もまたこうした犯罪の対策を行なっている。現在、デンマークの各銀行はフィッシング詐欺対策の専門部署を設置し、利用者のカード利用状況に不自然な点がないかを絶えず監視チェックしている。その対応も迅速だ。たとえば国外で大きな出費があると、すぐに銀行から確認の電話がかかってくる。また、AL銀行(Arbejdernes Landsbank)では、顧客が事前に特定の国を指定しておき、その指定国以外でカード利用があると即座に利用を停止するような新たな取り組みも行われている。

銀行のアプリを持っていれば、カード使用履歴が一目で確認できるため、基本的に犯罪に気がつきやすいシステムにはなっている。

 

■ 若者へのサポートに取り組む銀行

しかし、今後は銀行の犯罪対策だけでなく、利用者個人のリスク管理も重要となってくるだろう。

こうしたなかで、AL銀行の新たな取り組みとして注目されるのは若者へのサポートだ。大学と連携し、今後、資産運用の知識が必要となる若者に金融リテラシーを教育するプログラムを提供していたり、イノベーションラボを設立し、ミレニアル世代を巻き込みながら未来の銀行の姿や銀行サービスの模索を始めている。こうした取り組みは現時点で直接利益につながるわけではないが、将来的に彼らはAL銀行の新規顧客となるかもしれない。デンマークの銀行は長期的な視点を持って、未来社会を担う若者を社会で一緒に育てていこうとする姿勢を持っているようだ。

 

(注1)

Dankort(ダンコート):成人しているデンマーク国籍保有者の90%以上が所有しているデンマーク独自のデビットカード。大型スーパーマーケットだけでなく、個人経営店など、デンマークに存在する店舗のほぼ全てで使用できる。

(注2)

MobilePay(モバイルペイ):デンマーク最大の銀行DanskeBankが提供するスマートフォンの電子決済アプリ。デンマークのスマートフォン使用者の90%がダウンロードしていると言われる。

 

トップ画像:Danske BankのMobile Pay 出典 Danske bank

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