拉致を置き去りにさせない方法
Japan In-depth / 2018年5月16日 7時0分
目下、トランプ政権は、北が「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」に応じない限り、日米中心に「最大圧力」戦略を維持するとの立場を変えていない。日本人拉致問題を首脳会談の場で持ち出すとも確約している。
日本としては、トランプ氏に次のように強調してもらえば必要十分である。「安倍首相が納得する形で拉致問題を解決せよ。安倍が納得できないという限り、アメリカも制裁を緩和しない」。
6月12日の米朝首脳会談を経て、今度はアメリカを騙せる展望はなく、日米の結束も強いと悟った場合、北朝鮮が、日米分断の思惑も込め、拉致問題の「解決」を掲げて対日接近を図ってくる可能性は充分ある。
ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らが「非核化」の理想型として掲げるリビア・モデルが参考になる。軍事圧力と経済制裁で体制の危機を感じたリビアの独裁者カダフィが、明確かつ具体性を持った非核化に最終的に応じたのが2003年12月19日であった。ここで注目されるのは、その前の9月にまず「テロの清算」に応じた事実である。
▲写真 ジョンボルトン大統領補佐官 出典:flickr photo by Michael Vadon
筆者は今年5月初旬に訪米した際、リビアとの詰めの交渉に当たったロバート・ジョゼフ氏(当時国家安全保障会議「拡散戦略」担当上級部長)と面談し、様々な経緯を聞いたが、リビア側は核とミサイルの放棄については最後まで誤魔化しを試みたという。
▲写真 島田洋一氏(左)とロバート・ジョセフ氏(右)提供:島田洋一
しかし米側は一切妥協しなかった。そこで、リビアにとってより小さな問題、言い換えればより切りやすいカードである「テロの清算」(この場合、1988年のパンナム機爆破事件の犠牲者遺族に対する補償金支払い)にまず応じ、できる限りの制裁緩和を勝ち取ろうとしてきたわけである。
この経緯に照らせば、日米中心に強い姿勢で核とミサイルの廃棄を迫れば迫るほど、北としては、より切りやすいカード(例えば被害者を帰せばよいだけの拉致)をまず切ってくる可能性が高まると言えよう。
拉致問題解決のためにも、核・ミサイルで安易な妥協をしてはならない。
トップ画像/訪米した安倍首相(左)とトランプ米大統領(右)2018年4月18日 出典:首相官邸インスタグラム
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