米朝首脳、妥協の可能性は低い
Japan In-depth / 2018年5月29日 20時0分
▲会談中止を伝えるトランプ書簡 出典:ドナルドトランプ大統領Twitter
金正恩は外交上手という分析があるが、果たしてそうか?朝鮮半島の外交は伝統的に「全方位外交」という名の「冊封・朝貢外交」だった期間が長い。考えてみれば、現在の北朝鮮外交も様々な勢力の間で巧みにバランスを取っている。外交巧者というよりは、外交的失敗を犯さないよう必死に立ち回っているように見えるのだが。
続いて中国だが、22日の米韓首脳会談冒頭でトランプ氏は「(5月8日の)第二回中朝首脳会談の後、金正恩の態度は微妙に変わった」「中国については気に入らない」などと述べている。これってまさか諜報機関からのブリーフィング内容ではないだろうな。それを喋るとすれば、とんでもない大統領だ。そうでないことを祈るしかない。
そもそもメディア上の通説は、北朝鮮が「中国の後ろ盾を得てより大胆」になったことで米朝首脳会談開催が危うくなったというものだが、これも本当にそうなのか。金正恩の基本的政策は当初柔軟だったが、中国と話しただけで「態度が変わった」とでも言うのか。根拠は何だろう。金正恩とその知恵袋を過小評価するのは危険だ。
過去数週間の間に、米朝首脳会談を題材とした政策シミュレーションを何度か実施してきたが、そこから推測できることは、米朝間の妥協や相互理解の可能性など決して容易でないということ。ボクシングに例えれば、今は第三ラウンドだが、このところ試合の展開が極めて速く、ラウンドの長さも増々短くなっている印象がある。
しかも、独裁的な指導者が事実上の担当官となって外交を動かしている点では米朝とも似たり寄ったり。どうやらこの試合、最終の十ラウンドまでドタバタが続くのではなかろうか。そうした懸念は日本だけでなく、韓国や中国も同様に感じているはずだ。恐ろしい程の予測不能性の中で行われる多国間外交は実に久し振りではないか。
〇 中東・アフリカ
イランはEUに対し、いわゆるイラン核合意(JCPOA)の将来に関する新たな計画を5月末までに提示するよう求めているそうだ。しかし、コンセンサスがないと動けないEUがそんなに早く結論を出せるとは到底思えない。やはり、JCPOAは風前の灯なのだろうか。
〇 欧州・ロシア
ようやくイタリアで新政府が決まったかと思ったら、やれ空中分解だ、年内に新たな選挙実施だなどと言っている。ローマは相変わらずだ。フランスでは鉄道改革問題でまた抗議運動が燃え盛っている。5月30日、ギリシャでは相変わらず緊縮財政問題でストライキがある。米国の鉄鋼アルミ関税のEUに対する免除は6月1日に失効する。
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