「共産党が慰安婦を迫害」中国政府系学者
Japan In-depth / 2018年5月31日 11時0分
中国政府が展開する反日歴史戦は、韓国より一層戦略性を持っている。その狙いは大きく三つに整理できよう。
①日本の精神的武装解除。すなわち中国のアジアにおける覇権確立に障害となる地域大国日本に贖罪史観を浸透させ、抵抗意思を萎えさせる。
②「反省しない日本」への敵愾心を掻き立て、「団結」を崩してはならないと共産党一党独裁体制を正当化する。
③自由、民主、法の支配、人権などが欠如した中国の「現在」に焦点が当たらぬよう、「過去」に注意を逸らす。
こうした戦略の下、慰安婦の「研究」と対外発信の中心となってきたのが上海師範大学教授の蘇智良(Su Zhiliang)氏である。同氏らによる英語版『中国人慰安婦』(Peipei Qiu, Su Zhiliang, Chen Lifei, Chinese Comfort Women, 2014)は権威あるオックスフォード出版会から出されたこともあり、じわじわと影響を広げつつある。
▲写真 『中国人慰安婦』(Peipei Qiu, Su Zhiliang, Chen Lifei, Chinese Comfort Women, 2014) 出典:Amazon
多くの中国人女性が日本軍に拉致され、集団レイプされ、あげくに大部分が殺害されたと主張する同書は、しかし、無理な辻褄合わせをした結果、巨大ブーメランともなっている。
中国でも韓国同様、日本軍慰安婦は戦後長く社会的関心の外にあった。その存在が突如「問題化」しクローズアップされたのは、朝日新聞などが「強制連行」キャンペーンを始めた1992年以降である。従って、なぜそれほど深刻かつ大規模な「戦争犯罪」が長く知られずにきたかを、研究書である以上、合理的に説明せねばならない。『中国人慰安婦』は大要次のように論じる。
家父長イデオロギーが浸透した中国社会では、女性の純潔は生命より重い。生き残った慰安婦は非道徳な上に敵軍に奉仕した裏切り者と見なされた。共産党政権下では「反革命」の烙印も押された。日本兵と「寝た」かど※で北方の強制労働に送られるなど、ことさら辱められ迫害された。迫害に耐えかね自殺した者もいる。日本軍の性犯罪で最も多くの犠牲を出した国でありながら、中国で慰安婦の問題化が遅れたのはこうした理由による-。
以上が、中国の慰安婦研究第一人者による説明である。日本軍が管理する慰安所ではともかく命を長らえた慰安婦たちを、戦後、理不尽にも迫害し、死にまで追いやったのは、中国共産党だったというわけである。
事実とすれば、韓国のセクハラ詩人の偽善どころではない。慰安婦の不幸に関し、中国共産党の責任こそ最も厳しく追及すべきだろう。
※「寝た」罪、の意味
トップ画像/代表的な慰安婦像 出典:photo by YunHo LEE
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