拉致事件の新ドキュメンタリー公開
Japan In-depth / 2018年7月19日 9時58分
リー氏の経歴でユニークなのは2009年3月に同僚の韓国系アメリカ人女性記者とともに中朝国境で取材中に北朝鮮当局に拘束され、6月には労働教化刑12年の判決を受けたことだ。この拘束に対してアメリカの官民から激しい反発が起きて、同年8月にはビル・クリントン元大統領が北朝鮮に飛んで、リー記者らの解放を求めた。北朝鮮政府はそれに応じて、すぐにリー記者らに恩赦を与えて、帰国を許した。
▲写真 北朝鮮に拘束されたアジア系アメリカ人ジャーナリストのローラ・リン(Laura Ling)とユーナ・リー(Euna Lee)の解放を求める運動(2009年6月アメリカ) 出典:Keith Kamisugi from San Francisco, CA
▲写真 ビル・クリントン元大統領 出典:Center for American Progress Action Fund
今回の作品「終わりのない苦しみ」の製作のためにリー記者はスタッフとともに日本を訪れ、広範な取材を続けたという。
このドキュメンタリー・フィルムの内容はまず事件の発覚について1970年代の日本国内各地での若い男女たちの謎の失踪を取り上げ、国内一般の無関心を伝えながら、最初にその失踪を北朝鮮工作員と結びつけて報道した産経新聞社会部記者(当時)の阿部雅美氏の言葉を伝えていた。
フィルムはさらに拉致被害者の有本恵子、田口八重子、横田めぐみ、曽我ひとみ、曽我ミヨシといった人たちのケースを個別に取り上げ、それぞれの家族に直接インタビューして、長年にわたる悲しみや苦しみを当事者たちの言葉と表情で、なまなましく伝えていた。家族たちが被害者と過ごした楽しい日々の写真も多数紹介された。
▲写真 拉致された田口八重子さんの長男、飯塚耕一郎さん(左)と田口さんの兄、本間勝さん(右)2018年4月25日『政府に今年中の全被害者救出を求める 国民大集会』にて ©Japan In-depth編集部
フィルムはまた、北朝鮮当局がなぜ罪のない日本人男女を拉致したのか、その理由についてアメリカで日本人拉致事件の本を書いたジャーナリストのロバート・ボイトン氏を登場させて詳しく語らせていた。同時に日本政府の拉致問題担当相の加藤勝信氏のインタビューも複数回にわたり盛り込んでいた。
▲写真 ロバート・ボイトン氏 出典:NYUJournalism
▲写真 拉致問題担当相 加藤勝信氏 出典:加藤勝信氏 Facebook
同フィルムは全体として拉致の被害者とその家族の人間的な苦痛や悲劇に最大焦点を合わせて、北朝鮮政府の犯行を非難する基調で終わっていた。日本人拉致事件に対する国際的な関心や同情を今後さらに広めていくためには、きわめて貴重なドキュメンタリー・フィルムだといえそうだ。
なおこのフィルムへのリンクは以下である。
https://youtu.be/o2i_u8y8GJM
トップ画像:PAIN WITH NO END 出典 VOA 한국어
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