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“北”の有力カード 米兵の遺骨返還

Japan In-depth / 2018年7月25日 0時34分

米国防部資料によると、朝鮮戦争の戦死・失踪者は約7700人で、うち5300柱が北朝鮮に残っているとされる。冷戦終結後に始まった遺骨発掘で米国は1996年から約30回にわたって発掘団を北朝鮮に派遣した。2007年まで続いた発掘で443柱が米国に返還された。当時、米国は北朝鮮に1柱平均5万㌦を支払っており、北朝鮮にとって遺骨は格好の「ビジネス」になった。


米側は遺族約9割のDNAを採取しており身元確認はシステム化されている。また、北朝鮮側が提供する遺骨の保存状態が極めて良好で、まとめて保存されている可能性も指摘されている。



▲写真 韓国烏山(Osan)で遺骨収集する米軍兵士と韓国軍兵士 出典 U.S.Army (Photo by Sgt. Sinthia Rosario, Eighth Army Public Affairs)


遺骨返還は米国世論を軟化させるのに好都合で、「非核化に実績なし」の隠れ蓑に使われるだろう。非核化の遅延に不機嫌になっているトランプ大統領へのサービスになる。一方、今回の返還条件は明らかになっていないが、前例にならえば200柱で1000万㌦(約11億円)、北朝鮮にとっては都合のいい荒稼ぎである。


米兵の遺骨問題は日朝関係にも影響を及ぼしたことがある。2014年、日朝には、拉致被害者や残留日本人(終戦時、朝鮮半島に在住、帰国しなかった人々)などすべての日本人について、北朝鮮が調査するとした「ストックホルム合意」が成立したが、このとき北朝鮮が応じた理由のひとつが日本人の遺骨問題だった。北朝鮮での日本人戦没者の未帰還遺骨は厚生労働省の調査で2万1800人にのぼる。「北朝鮮が米兵士の遺骨返還から、日朝でも遺骨はカネになると踏んだ」といわれた。


シンガポールの米朝首脳会談から1カ月半が経った。両国の関係改善の名のもと遺骨問題や終戦宣言ばかりが焦点となる米朝協議は、北朝鮮の仕掛けた「長期化の陥穽」にすっぽりと嵌ってしまったようにみえる。


トップ画像:59年ぶりに米国に戻った朝鮮戦争で戦死した米兵士の遺骨 2009年9月22日 出典 flickr : The U.S. Army


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