“アメリカ第一”が壊す自由主義秩序
Japan In-depth / 2018年8月17日 16時12分
写真)2017年3月、自動車産業の従業員に対し演説するトランプ大統領
出典)twitter : @Dan Scavino Jr.
■ 米・EUも対立
またアメリカの対立している国は中国だけではない。日本やヨーロッパに対し鉄鋼、自動車などの高関税も検討中なのだ。日本の安倍首相は、アメリカに寄り添う政策を続けてきたので日本が自動車などの高関税の対象になるとは想定していなかった。それだけにアメリカが保護主義的姿勢を強めていることにとまどっている。アメリカの日本に対する貿易赤字は688億ドルに達しており、日米二国間交渉で風穴をあけたい狙いがある。特に戦闘機などアメリカの高額の防衛装備品の購入を求めてくるのは必至だし、自動車などに対しても市場開放と関税引上げを要求している。
写真)2017年2月9日、安倍首相がワシントンを訪れた際の共同記者会見の様子。
出典)首相官邸公式ホームページ
■ 中国は2050年に覇権を目指す
このほかアメリカは世界の環境ルールを定めたパリ協定からも脱退。また相次いで原発の廃炉を進め、シェールガスでエネルギーの主導権を確保しようとしている。中国は3年前に「中国製造2025年」と名付けた産業政策を掲げ半導体、電気自動車、AI、ロボット、宇宙、電気自動車などハイテク分野などでトップに立つ製造強国を目指すとしており、以来、米中間のハイテク覇権の争いも激化しているのだ。
写真) パリ条約採決時の様子
出典) UNclimatechange
さらにアメリカは安保でもEUとの亀裂を深めており、EUのロシアからの天然ガス輸入を非難したり、ドイツの国防費の低さを持ち出してEUの雄ドイツを「ロシアの捕虜」とまでこき下ろしEUとの関係を悪化させている。
戦後のアメリカは自由貿易推進、人権や環境の重視などを主導して自由主義圏のリーダーとして世界を引っ張っていた。しかしトランプ大統領になってから、自由主義などの価値観を重視するより“アメリカ第一”の方針に切り換えて戦後の秩序を崩してきたのが実情だ。こうしたアメリカの変化をみて中国がむしろ自由主義を叫び、世界の覇権を握ろうとしているようにみえるのだ。まさにトランプの登場とその政治のやり方で戦後秩序の大転換が起きようとしているようにみえる。
アメリカではトランプの強力な支持者は約4割といわれる。いまアメリカは経済が好調でトランプ批判も少ない。このままトランプ主義が力を増し、戦後の自由主義秩序を壊していってしまうのか。それともトランプが退陣すれば元の自由主義を価値とするアメリカに戻るのか。世界は重要な局面転換の時代を迎えているのかもしれない。
トップ画像:2018年3月8日、アルミニウム製品10%の関税引き上げを実施する大統領令に署名するトランプ氏
出典:flickr : the White House
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