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Made in Japanの落とし穴

Japan In-depth / 2018年10月7日 10時55分

一つ、私が体験した興味深い例を紹介しよう。


シンガポールで、鰻がおいしいと噂のレストランに行った時のことだ。日本人オーナーが経営するそのレストランは、日本産の鰻を使用しながらもリーズナブルな価格で鰻を提供していると定評があった。鰻は、鮮度・焼き方・タレなど細かなこだわりを持つ店も多く、まさに繊細さが要求される和食の一つだ。


焼き目がついた皮の香ばしさと、ふわっとした身の絶妙なバランスが最高に幸せな気持ちにしてくれる鰻…。それがシンガポールでも味わえるなんて…!うきうきしながら店に着くと、店頭にはすでに列ができており、ローカルのお客さんもたくさん並んでいる。ところが、メニューをペラっと1枚めくって、私は目が点になった。


そこには「鰻&ローストビーフ丼」という商品が写真付きでデカデカと載っていたのだ。


メニュー本の1ページ目といえば、当然その店の一押しの商品を載せる。それが、「鰻&ローストビーフ丼」…? 日本なら、うな重か、せめてひつまぶしをもってくるのが普通だろう。


でも、目の前で私に主張してくるのは「鰻&ローストビーフ丼」…。これがシンガポールで求められている現実なのだ。鰻だけで主役を張るには十分なのに、なぜローストビーフを組み合わせてしまったのだろう。言い知れない悲しさがこみ上げてきた。


しかし、この考えこそが落とし穴なのだ。


自分たちが素晴らしいと思うものが、相手にとっても同じように素晴らしいかというと、それはわからない。相手には相手の文化があり、日常がある。だから、どんなに「おすすめ」であっても、一方的に自分たちの主張を伝えることは、「おしつけ」になりかねない。


同じような話で、ベトナムで出汁をウリにしたうどんの店を出店したところ、出汁を感じられる「かけうどん」よりも、日本では想像できない「サーモンうどん」の方が人気が高いという話も聞いた。私は改めて、「日本を伝える」ということのリアルを見た気がした。



▲写真 イメージ図 出典:フォト蔵


 


■ 本当の意味のローカライズとは


よく、海外展開をする際に「ローカライズ」という言葉がキーワードとして出てくるが、結局のところローカライズというのは相手への配慮、リスペクトであると私は思う。


自分たちの文化を理解してもらうことは大切なことだ。場合によっては、それをそのまま受け入れてくれることもあるかもしれない。でも、私たちの当たり前が、世界でも当たり前になるとは限らない。そんな言うまでもないことを、時として忘れてしまってはいないだろうか。


ナポリタンは、イタリアには存在しないパスタだというのは有名な話だ。だが、日本人の我々は立派なパスタ料理として好んで食べている。



▲写真 イメージ図 出典:フォト蔵


他国の文化にアレンジを加えることで新しいものが生まれ、それが根付き、成長していく。そんな新しい文化の始まりがあってもいいのではないだろうか。


トップ画像:鰻丼 出典 ACphoto


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