官民ファンド崩壊の教訓
Japan In-depth / 2018年12月23日 15時42分
結局、このシステムでは「将来有望なベンチャー企業を探して育成するファンドを目指すという目的は達成できないし、民間らしい機動的なファンドは出来ない」として手を引くことになったわけだ。
政府はこれまでJT株や税金などを原資に約7800億円の資金を官民ファンドに投じてきた。しかし、これまで投資した14ファンドのうち、8ファンドの投資額が国などの出資金の50%に満たなかった。魅力ある投資案件をみつけられなかったのだ。
▲写真 株式市場・電光掲示版(イメージ) 出典:pixabay; AhmadArdity
また政府がこれまで設立した14ファンドのうち、既に6ファンドは成功していないといわれ、政府もムダ金投資の批判に耐えにくいと判断したことも背景にあるようだ。実際、農水省所管のファンドは6年間に1770億円の投資予定だったのに、実績はわずか90億円。総務省案件も1370億円の投資計画に対し50億円だった。収益が見込めないのに人件費と運営費だけで毎年10億円単位の経費がかさんでいるという。
そもそも民間ファンドは、民間のリスクで将来、宝となるような企業を探し当てるのが狙いなのだが、新産業の芽が出てこない昨今の経済の動きに業を煮やしたのか、政府が専門家を集めて投資先をみつければ官民ファンドも成功すると思ったところに甘さがあったのかもしれない。
所詮、保証をバックにした官のファンドは死ぬ気で成功させる気概も少なかったのではなかろうか。本気のベンチャー投資はリスクもあるが、そのリスクを認識して成功への道を探るのが本当の“ベンチャー”で、日本にはまだまだベンチャーが育つ土壌がないということなのだろう。
そもそもまだ成功した官民ファンドがほとんどないのに、国の出す報酬額を巡ってもめるところに、真のベンチャー精神が宿っているとはいい難いともいえる。まだまだ日本のベンチャー風土、ベンチャー精神は甘い?といえるのではなかろうか。機構の方もいくつかの成功例を出してから報酬アップを申し出ればよかったと思うが、少しふっかけすぎて世間の常識を見間違えたといえるのではないか。
トップ写真:経済産業省 出典:Frickr: Dick Thomas Johnson
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