対北、軍事オプション復活も~2019年を占う~【朝鮮半島】
Japan In-depth / 2018年12月29日 0時0分
「窓が閉められている」との表現は過去に緊迫した状況で使われたことがある。ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年1月28日、米国のジョン・ネグロポンテ国連大使が「外交的解決のために開いていた窓が閉められている」と話したが、それから約2カ月後(3月20日)に米国はイラクを侵攻した。
もちろんトランプ政権が北朝鮮の不誠実な態度に反発して直ちに北朝鮮に対する軍事行動を準備する可能性は低いと思われるが、「機会の窓」発言はトランプ政権内部で強硬圧迫論が頭をもたげていることを示唆するもので注目が必要だ。
■ 制栽強化だけでなく軍事オプション復活の可能性も
北朝鮮が対話による「核兵器の完全な廃棄」に応じない場合、制裁強化とともに軍事オプションの復活も否定できない。しかしそうした行動には文在寅政権が必死に妨害することは明らかだ。そのために米国はいま、韓国軍を動員しない方法でのミサイル基地破壊と「金正恩除去(レジームチェンジ)」訓練を強化し始めている。
ミサイル基地破壊訓練としては、11月19日に米国ユタ州ヒル空軍基地で史上初のF35A 60機によるミサイル基地破壊訓練「エレファントウォーク」が実施された。この訓練は、中国やロシアを想定したものだとしているが、実は北朝鮮のミサイル基地、特には移動式ミサイル発射台を壊滅する訓練であった。
▲写真 F-35A combat power exercise conducted at Hill AFB 出典:U.S. AIR FORCE
金正恩除去作戦も同時に準備されている。在日米軍基地を活用した韓国軍を使わない「斬首作戦体制」の構築だ。そのために上陸用強襲揚陸艦「ワプス」(1989年就航、41500トン)を2014年就航の強襲揚陸艦「アメリカ」(44900トン)に交代させる。「アメリカ艦」は海上上陸作戦用の「ワプス艦」とは違い、特殊部隊含む海兵隊と輸送機オスプレイ、スーパーコブラ戦闘ヘリ、重量輸送ヘリのシー・スタリオン(CH-53)、対潜水艦ヘリ、偵察ヘリ、そしてF35Bステルス戦闘機など、空からの潜入に特化した最新鋭武器を搭載している。
■ 韓国パッシングで米朝直接交渉へ移行も
金正恩にオールインした「仲裁者文在寅大統領」の「北朝鮮非核化交渉」での影響力は低下するだろう。数々の「ウソ連発」で国内的にはすでにレイムダック化していが、米国に対しても「朝鮮半島の非核化」は「北朝鮮の非核化」だと伝え、「金正恩が1年以内に非核化すると約束した」などと欺瞞したために、韓国パッシングで米朝交渉から排除される可能性もある。
▲写真 文在寅韓国大統領 ホワイトハウスでトランプ大統領と共同記者会見(2017年6月30日)出典:Wikipedia
韓国の民間シンクタンク、峨山政策研究院は12月19日に「2019年国際情勢展望」と題したリポートで「韓国が来年も北朝鮮問題ばかりに集中すれば、北東アジアのパワーバランスが変化する過程で『コリア・パッシング(韓国外し)』が現実化する恐れがある」と指摘した。
2019年、韓国は「北朝鮮非核化」をめぐって米国と北朝鮮のどちらの側につくのかの選択を迫られることとなるだろう。
金正恩委員長が核兵器の申告に踏み出すか否か、トランプ大統領が、これまでの「先核兵器申告」の原則を守れるかどうか、2019年朝鮮半島の行方はこの二人の指導者の決断にゆだねられている。
トップ写真:金正恩委員長とトランプ米大統領 出典:Wikimedia Commons
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