米、深刻な国内政治の劣化
Japan In-depth / 2019年1月16日 16時55分
壁ができるか否か以上に気になるのが、米国内政の政治動向だ。これについては今週日経ビジネス電子版に詳しく書く予定だが、サワリだけをご紹介しよう。重要なことは、トランプ氏が米国政治の本質ではなく、1970年代のベトナム戦争とウォーターゲート事件以降に起きた米国内政劣化の「結果」もしくは「症状」に過ぎないことだ。
写真)ウォーターゲート・ビル
出典)Flickr;Allen Lew from Berkeley, USA
Class of '74という言葉がある。ウォーターゲート事件後の1974年中間選挙で共和党が大敗し、76人もの改革派民主党議員が誕生した。彼らは議会での年功序列長老支配の打破、権力分散化、政治資金・選挙区改革などを断行したが、それと同時に、連邦議会内に現在に繋がるような深刻な党派対立の種を撒いたとの批判もある。それでは昨年の中間選挙で生まれた第116議会は如何なる役割を果たすのだろうか。
〇東アジア・大洋州
先週米中貿易高級事務レベル会合が北京で開かれたが、どうやら両国は何らかの合意に向け動き出したような気がする。トランプ氏は株価が気になるだろうし、中国もこのままではジリ貧だからだ。ところがその最中に金正恩委員長が訪中した、これって偶然だろうか。恐らくそうだろう、あまり深読みする意味は少ないのではないか?
〇欧州・ロシア
14日に日露外相会談があるが、報道によれば露外務省報道官は、外相会談後の共同記者会見を「日本が拒否した」と述べ、「日本は平和条約問題で情報の不安定な状況を作り出して人々を惑わす一方、協議の結果を記者会見で伝える意思はない」と主張したそうだ。ロシア外務省は相変わらず小細工が得意である。
〇中東・アフリカ
先週からポンペイオ国務長官とボルトンNSC補佐官が中東諸国を歴訪している。国務長官はアラブ8カ国を訪問中、補佐官はイスラエルとトルコを訪問したが、早速ボルトン氏が炎上してしまった。同補佐官がイスラエルで「シリアからの米軍撤退はシリア・クルド勢力の安全をトルコが保証することが前提条件だ」と述べたからだ。
当然、エルドアン大統領はこれに激怒、ボルトン発言を「重大な誤り」と罵倒し、同補佐官との会見をキャンセルした。。シリア米軍撤退をトランプ氏が唐突にツイートしてから一カ月も経っていないのに、ボルトン補佐官は大統領の決定を実質的に変え、一方で在シリア米軍は撤退を開始したとも報じられた。こんな稚拙な米国の中東外交を見るのは初めて、正直なところ、とても見ていられない。
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