板挟み承知で新司法長官に ウィリアム・バーの勝算 トランプ政権「行く人来る人」列伝1
Japan In-depth / 2019年2月17日 10時31分
法の専門家として華々しい経歴を残して引退し、自適悠々の暮らしをしていた68歳のバーがなぜ、政治的に難しい立場に立たされるとわかっているこの任務を今さら引き受けたのか? おそらく、たとえセッションズのようにトランプ大統領と衝突してクビになったとしても、その後にまた仕事を探す必要もなく、既に長年の司法キャリアというレガシーを持ち、司法長官としての経験のある自分なら、マラー特別検察官の捜査を継続させ、司法長官として正しい判断ができると考えていたからだろう。
バーの承認を決めるための上院公聴会でも、さんざん「ロシア疑惑の捜査が完了したら、その報告書を上院、あるいは国民に公表する意思はあるか?」と聞かれ、「報告書の内容如何で正しい判断をする」と答えるに留まり、明確にYesかNoと言うのを拒否している。これはYesと答えればトランプの信用を失い、Noと答えれば司法長官として承認されなくなってしまう恐れがあったためだ。民主党側は少なくとも、バーが捜査の妨害をすることなく、また捜査内容をトランプ陣営に漏らすことなく見届けることを期待しており、結果が発表されないとなれば憲法違反だと訴えるだろう。
バーは、司法省時代から懇意で、同じ共和党であるマラーをして、個人的に尊敬するに値する人物だと公言しているが、その一方で、捜査委員会にリベラルな民主党員が多いのはバランスを欠くとコメントしたり、また、マラー捜査官がロシア疑惑を捜査するのは任務の範囲以内だが、トランプ大統領の司法妨害行為を調査するのはおかしいと批判している。また、ジェームズ・コミーFBI長官がトランプ大統領によっていきなり解雇されたときも、大統領にはそうする権利があると言って、これを批判していない。
写真)ジェームズ・コミー元FBI長官
出典)Frickr; Rich Girard
要するに、バーは根っからの共和党エスタブリッシュメントの人間ではあるが、トランプ大統領をどこまで擁護するかどうかは未知数ということだ。昨年秋にホワイトハウス法律顧問である、ドン・マギャンが退任した際、直属の弁護士チームに加わるようトランプ大統領がアプローチした時はこれを断っている。
この後、取り上げる予定の人
ポール・マナフォート(元選挙管理対策委員長、逮捕・有罪判決、刑期待ち)
ロジャー・ストーン(ニクソン大統領を信奉するお騒がせ野郎、逮捕、起訴状待ち)
スティーブン・ミラー(トランプ政権移民対策担当)
アンドリュー・マケイブ(前FBI副長官、トランプによって辞職、最近曝露本を上梓)
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