米朝首脳会談決裂と日本メディアの錯誤
Japan In-depth / 2019年3月4日 18時28分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・トランプ大統領は慎重かつ強固な姿勢で会談に臨んだ。
・トランプ大統領の完全非核化を求める姿勢変わらず。
・ 金委員長からの撤回要求から、その効果が見えた「経済制裁」。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44499でお読み下さい。】
米朝首脳会談が合意をみずに終わった。事実上の決裂だといえよう。さてこの事態は日本側での主要メディアや識者の予測を裏切っていた。日本側の予測がみごとに外れたのである。その日本側の錯誤について報告しよう。
第一にはトランプ大統領は「前のめり」ではなかった。
日本では朝日新聞をはじめ、「トランプ大統領は北朝鮮との合意に前のめりとなり、安易な妥協をするだろう」という予測が多かったが、今回の会談では同大統領が慎重で、強固であることが証された。
日本の主要紙には「トランプ大統領は再選のための成果をあげる目的で、北朝鮮との合意を急ぐ」とか「ロシア疑惑から自国民の関心をそらすため、北朝鮮との合意をとにかく得ようと前のめり」という「解説」が満ちていた。だが現実には北朝鮮の制裁解除の要求をはねのけ、会談を中断したのである。
第二には、トランプ氏は北朝鮮の完全な非核化を求める姿勢は変わっていなかった。
日本側では「トランプ氏はもう完全な非核化をあきらめ、段階的な非核化、あるいは核保有の容認という態度になった」という「観測」が多かった。
▲写真 トランプ大統領(2018)出典:The White House
だが今回の米朝首脳会談ではトランプ大統領は北朝鮮の非核化を正面から求めていることが明白となった。大統領自身もその旨を改めて宣言した。北朝鮮の部分的な非核化にみえる提案はあっさりと退けたのだ。その完全な非核化とはCVID(完全で検証可能、不可逆的な非核化)の基本線に沿った目標である。
第三には、北朝鮮に対する経済制裁は効果をあげていることである。
金正恩委員長はアメリカと国連による一連の経済制裁の撤回要求に最大の比重をかけて、トランプ大統領に対峙した。とにかく制裁を緩和、あるいは撤回してほしいという訴えだった。ということは北朝鮮最高指導部はいまの制裁から苦痛を受け、その解除こそを最優先課題としているわけだ。つまり経済制裁はその所定の効果をあげている、ということである。
▲写真 平壌・錦繍山太陽宮殿 出典:Flickr; Mark Scott Johnson
この点も日本側のメディアや専門家たちの多くが「経済制裁はその効果をあげてはいない」「北朝鮮はいまの制裁を苦痛とは思わず、多様な方法で経済をうまく運営している」といった論調を展開していた。
少なくとも上記の3点において、日本側多数派の見解はあやまりだったことが明白になってしまった。大きな錯誤だった。そのまちがいを素直に認め、反省することが今後の国際的課題へのより正しい取り組みにつながるだろう。
トップ写真:第2回米朝首脳会談(2019)出典:在ベトナム米国大使館
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