ウイグル弾圧で米中対立激化
Japan In-depth / 2019年3月18日 11時0分
私はその『米中対立の真実』のなかでもウイグル人弾圧問題の実態を説明し、中国共産党政権のこうした無法な行動こそがいまの米中対立をもたらしのだという構造を解説した。
▲写真 ウイグルの人々 出典:Flickr; ChiralJon
さてロギン記者がいまこのウイグル人弾圧を取り上げたことには二つの理由があった。
第一はトランプ政権の国務省が3月13日、発表した「世界各国の人権状況報告」が中国のウイグル人弾圧を現在の全世界でも最も大規模で残酷な人権弾圧だとして非難したことだった。
同報告は中国共産党政権がいま新疆ウイグル自治区で合計200万人にも及ぶウイグル人を拘束し、ウイグル独自の宗教、言語、文化、習慣、歴史などを抹殺する大洗脳作戦を続けている、と伝えていた。その手段としては大量な強制収容だけでなく、ウイグル人の家庭内に政府工作員を住ませて、監視し、再教育することや、その弾圧に抗議するウイグル人活動家の逮捕、拷問、さらには海外で活動するウイグル人の留守家族への懲罰などがあるという。
同報告書を発表した同国務省の人権担当のマイケル・コザック大使は「中国政府のいまのウイグル弾圧は1930年代のナチス・ドイツのユダヤ人弾圧にも等しい」とまで述べていた。
▲写真 マイケル・コザック大使 出典:米国国務省
ロギン記者のウイグル弾圧提起の第二の理由はいまのアメリカ議会で「ウイグル人権政策法案」の審議が進むことだった。
同法案はアメリカ政府が中国のこの弾圧に直接の責任を有する政府高官を懲罰し、中国政府全体への経済制裁を課し、弾圧に使われる高度技術の機材のアメリカからの輸出を禁止することなどをうたっている。
下院では同法案は共和党保守派のクリス・スミス議員や民主党超リベラル派のイルハン・オマール議員など超党派の合計39人により共同提案された。トランプ政権への攻撃の先頭に立つナンシー・ペロシ下院議長もそのなかに入っている。
▲写真 ナンシー・ペロシ下院議長 出典:Nancy Pelosi Twitter
上院でも共和党のマルコ・ルビオ議員や民主党のエリザベス・ウォーレン議員ら同じく超党派の25議員が共同提案者となり、同法案を推進している。リベラルと保守、トランプ支持とトランプ糾弾の両勢力が一体となった中国政府糾弾の法案なのである。
中国政府がいまこの時期にウイグル人の遺伝子までも変えようとする大弾圧をあえて始めた主要な理由は新疆ウイグル地区を「一帯一路」の出発地域として中国政府の支配の下で安定させたいという意図だとされる。そうなると日本の安倍政権が「一帯一路」への協力姿勢をみせていることまでがアメリカ側の批判の対象ともなりかねないわけである。
▲「米中対決の真実 」古森 義久(著)海竜社
トップ写真:ホワイトハウス前 中国のウィグル弾圧に対する抗議デモ flickr:Malcolm Brown
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