HPVワクチン名誉棄損訴訟判決 被害者は誰だ?
Japan In-depth / 2019年3月27日 0時12分
Japan In-depth編集部
【まとめ】
・HPVワクチン名誉棄損訴訟判決で、被告側敗訴。
・守る会、科学的言論が萎縮することに懸念表明。
・村中璃子氏、公共性と科学を無視した判決だとコメント。
本日3月26日、東京高裁において、「HPVワクチン名誉毀損訴訟」が第一審判決を迎えた。
裁判概要
元信州大学医学部長・厚生労働科学研究班の主任研究者、池田修一氏が、医師・ジャーナリストの村中璃子氏、村中氏の記事を掲載した月刊誌Wedgeの元編集長の大江紀洋氏、株式会社ウェッジを名誉毀損で訴えた裁判である。
2016 年 3 月 16 日、池田修一氏が、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに脳に異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ」「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」と説明する映像が TBS「NEWS23」で全国放送された。これに対し村中璃子氏は、月刊誌Wedgeに「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」と題した記事を寄稿。関連記事も合わせて、池田氏の発表を「捏造」だと主張した。対して池田氏は、意図的な不正はしていないと主張し、約1100万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて提訴。村中氏は、スラップ訴訟だとして反訴していた。
研究発表そのものについては、厚労省が「国民の皆様の誤解を招いた池田氏の社会的責任は大きく遺憾」と発表。また信州大が設けた外部有識者による調査委員会も「混乱を招いたことについて猛省を求める」などと報告している。また、再現実験・修正の要請もなされたが、池田氏は学会や論文など科学の場での反論、再現実験などを行っていない模様だ。
判決
男澤聡子裁判長は、村中璃子氏、大江紀洋氏、ウェッジに対し、330万円の支払いを命じた。また、ウェッジに対しては、記事の一部削除と謝罪広告の掲載を命じた。判決の根拠として、村中氏が指摘した、池田氏が研究成果を「捏造」した事実は認められないとした。村中氏側は、実験担当者や専門家への取材に基づいていると主張したが、取材は不十分だったと判断された。
判決後の記者会見で池田氏は、原告側の主張を認めたものであると評価した上で、「ワクチン接種への賛否には関与しておらず、ひとえに、ワクチン接種後の有害事象について原因を追究したいという思いだった。」と述べた。また、「『不正』『捏造』という言葉は、研究者生命を絶つようなものだ。」と今回の訴訟に対する思いを訴えた。
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