依存症叩きで自縄自縛のTV
Japan In-depth / 2019年3月31日 19時58分
・LITERA
「ピエール瀧報道で『バイキング』坂上忍「ドミューン知らない」だけが問題じゃない! 自分を棚に上げ逸脱を許さない道徳ファシズム」
・BuzzFeed Japan
「ピエール瀧さんを私がバッシングしない理由 深澤真紀さん、松本俊彦さん薬物報道を斬る(1)」
・ギャンブル依存症を考える会田中紀子代表ブログ
「バイキングの取材方法と番組構成に対する疑問です」
■地上波テレビに求められるもの
これらのネットメディアの記事の中には、「バイキング」がネットでの炎上を狙っているのかと勘繰る論調もあるが、そのネットメディアも地上波テレビ番組を叩いてPVを稼いでいるのだからどっちもどっちだという気がしないでもない。
それはともかく、問題は地上波テレビが“放送法の遵守を求められている”ということだ。放送法には「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」とある。
出演者が勝手な意見を言うのは構わないが、それが一方的になってはいけない。回復治療に懸命に取り組んでいる依存症患者がいて、その支援に日夜奮闘している医療関係者・支援団体の人々がいる。逮捕された芸能人の作品をこよなく愛し、その作品に触れることが出来なくなることを心から悲しんでいる人がいる。視聴者に社会には多様な意見があることを紹介する責務が地上波テレビには、ある。依存症を反社会的な犯罪だ、と断罪することは簡単だが、ことはそう単純ではない。
社会にはあらゆる依存症が「病」として存在する。身近なアルコール依存、ニコチン(タバコ)依存に始まり、ゲーム依存、ギャンブル依存、セックス依存・・・あらゆる依存症に悩んでいる人がいる。彼らすべてを「依存症になるのは意思が弱いからだ」と非難し、「社会に存在すべきではない」と排除していいのだろうか?
それより、依存症は治すことができる病だということを知ってもらい、治療から回復へと導くことの方が、社会的により意義のあることなのではないだろうか。
依存症をバッシングすることだけで、社会は決して良くはならないと筆者は考える。池に落ちた犬を棒で叩くような社会、匿名で人をバッシングし、貶め、留飲を下げる社会より、寛容・赦しがある社会。排除ではなく包摂のある社会に私はいたい、そう強く願う。
地上波テレビには一方的な断罪ではなく、そうした社会の在り方に一石を投じる番組作りを強く望む。幸い、フジテレビには4月からの新ニュース番組でこの問題を扱う動きがあるようだ。情報番組に対する批判をどう受け止め、今度はどのような意見を視聴者に提供してくれるのか、注目している人は多い。こうした問題にネットメディアに先駆けて、正面から向き合うことが、今、地上波テレビに求められている。
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