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ヌードルハラスメントって?

Japan In-depth / 2019年4月16日 23時0分


▲写真 リゾット(イメージ)出典:Tumblr Unknown


しかし、もしも彼女が日本に来て、ジャパニーズ・ヌードル=蕎麦を食べてみたいと言ったなら、私は躊躇なく、彼女を連れて行った蕎麦屋で、音を立ててすすり込むだろう。蕎麦というのは喉ごしを楽しむ食べ物なので、空気を含ませながら勢いよくすすり込まねば、その真価を味わうことができない。


その音が不愉快だというのであれば、蕎麦屋やラーメン屋に入らなければよいのであるし、まあ考えにくいことであるけれど、日本の蕎麦屋で、日本人が蕎麦を食う音に眉をひそめるような「害人」がいたとしたら、私ならそいつを店からつまみ出す。


真面目な話、屋台の蕎麦が庶民の食べ物として定着した江戸時代の中期、すなわち17世紀の話だが、ロンドンではフォークを用いて食事をする習慣はまだなかった。英国にフォークが普及するのは18世紀以降の話である。それ以前はもっぱらナイフだけ、もしくは手づかみで食事をしていた。



▲写真 手づかみでの食事(イメージ)出典:Flickr; Michele Hubacek


イタリアではもう少し古く、1600年頃までには普及していたようだが、関ヶ原の合戦が1600年のことだから、箸を用いる日本の食文化の方が、はるかに古い歴史を持っていることは、もはや議論の余地さえない。古いからよいとは、もちろん限らないけれども、西欧式のテーブルマナーは、西欧で食事をする時のみ徹底すればよいことだ。


そもそも、EUの総人口は約5億人。インド亜大陸では、それに倍する人々が、今でもカレー料理を手で食べている。それ以前に、西欧とか欧米といったように、十把一絡げに言うこと自体、感心しない。


スペインのトレドで、肉料理が評判の店に入った時のことだが、隣のテーブルにいたイギリス人観光客(英語のアクセントで、すぐ分かった)が、ウェイターを呼びつけてステーキの焼き直しを要求するのを見た。折角シェフが、絶妙のミディアムレアで焼いてくれたというのに、私に言わせれば、これなどは料理人に対する一種の暴力である。


日本人が一般に抱いているイメージとは少し異なるのかも知れないが、血のしたたるようなステーキなど「気持ち悪い」と言ってはばからないイギリス人は、実は結構多い。


今「イギリス人」とわざわざ表記し、いつものように「英国人」と書かなかったのは、牛肉の名産地であるスコットランドでは、ステーキの焼き加減をちゃんと聞いて、望めばレアを供してくれる店が多いからだ。このように島国の英国内でさえ、イングランドとスコットランドでは文化が異なる。


先ほどインド亜大陸のカレー料理という表現を用いたが、これも地域によってかなり異なるし、また宗派によってタブーとされる食材なども異なるため、多種多様という表現では収まりきらない話になるらしい。


もちろん、それを言い出したら、フランス料理やイタリア料理、日本のいわゆる郷土料理など、多かれ少なかれ同様ではないか。友人の韓国人ジャーナリストからは、キムチは家庭で仕込む物であるから、「わが民族は、皆〈我が家のキムチ〉を恋しがることはあっても〈本場のキムチ〉などどいうことは考えつきません」と聞かされたこともある。


捕鯨の問題などもそうだが、他国の食文化をむやみに見下す態度は、断じて正しくない。まして、了見の知れない「害人」に迎合して蕎麦を食べる音がどうのこうのなど、論外である。


トップ写真:蕎麦 出典:pixabay; K2-Kaji


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