情報銀行の鍵「情報利用権」
Japan In-depth / 2019年4月27日 18時0分
日本でも、個人情報保護法の改正(2017年施行)により、パーソナルデータの開示が企業に義務付けられている。例えば、同法28条1項では「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの開示を請求することができる」とされ、同法34条の規定に基づき、企業が開示等を拒否したときは提訴も可能である。
しかしながら、欧州(EU)のデータポータビリティー権と比較すると、手続きが煩雑で使い勝手が極めて悪い。例えば、某企業のホームページを見ると、次のような手続きを要求される。
①まず、ホームページからPDFファイルの「個人情報開示等請求書」をダウンロードし、ボールペン等で記載する。
②次に、運転免許証・健康保険証・パスポート等の公的機関が発行した書類をコピーする。
③その上で、開示請求の手数料として、800円分の郵便定額小為替を購入し、①・②の提出書類に同封して郵送するというものである。
企業によっては、郵送もできず、事業所まで書類を持参する必要があるケースもあり、開示報告書も機械判読可能なデータ形式でなく、紙ベースが多い。このため、日本では、個人が自らのデータを開示請求し移行するコストが大きく、情報銀行にパーソナルデータを預けるときのハードルが高い。すなわち、我が国の個人情報保護法が定める手続きでは、情報銀行の成否を握るデータ移転を円滑に行うのは不可能に近い。
▲写真 日本では企業に個人情報開示請求する際に運転免許証コピーなどの郵送提出が求められるケースも 出典:Public domain (ウィキメディア)
なお、日本国内でも、グーグルやフェイスブックが保有するデータは簡単に取り出すことができる。例えば、グルーグルでは「Google Takeout」というツールがあり、グーグルが保有するパーソナルデータ(例:GoogleマップやGmail等のデータ)を個人が簡単にネット上からダウンロードできる。また、フェイスブックでも、投稿内容等を簡単に取得できるが、グルーグルやフェイスブックは一部の例外である。
企業の多くで「データポータビリティー権」に否定的な理由は、データを移転してもメリットが何もないためである。この問題を解消するためには、パーソナルデータを生成する企業にもデータ移転で個人が得た報酬の一部(例:数パーセント)を返すことなどのルールが必要であり、その義務づけを盛り込んだものが「情報利用権」である。報酬の一部を受け取ることができるならば、情報銀行と協働しながら、データを生成する企業もデータ移転をしやすい環境整備を行うインセンティブが生まれるはずである。
また、データの移転をリアルタイムで円滑に行うためには、移転対象となるデータ形式の標準化を図るとともに、本人の指紋認証など、いくつかのセキュリティをかけながら、個人の指示に従ってボタン一つでデータ移転や共有が可能となるスマホのアプリ等の開発も望まれる。
トップ写真:個人情報イメージ 出典:pixabay
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