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民主主義と資本主義との相克

Japan In-depth / 2019年4月28日 7時0分

民主主義と資本主義は必ずペアでなければ存立できないという理屈はない。ただ、どちらも社会、経済を構成するプレーヤー(有権者、企業や家計など)が独立して意思決定をすることを前提としている。第1次、第2次の世界大戦を経て、先進国の所得分配は並べて平等化の方向に進んだ。その結果、いわゆる「中間層」がどの国においても一定のマジョリティを形成し、そのマジョリティが多数決を基本とする民主主義のメカニズムを通じて国家の意思決定をしてきた。その下で、資本主義をサポートする民主主義という図式になっていたと考えることができる。


しかし、資本主義そのものが、所得分配をある種の定義の下で平等化する機能を本質的に内包しているわけではない。実際、1990年代以降に所得格差の拡大が続いた結果、私達が経験したようなグローバル化の下での資本主義が、一部否定される意思決定が英国、米国でもなされた。つまり、民主主義と資本主義の相克が始まったとも言える。


最近、欧米の有識者と話をすると、日本は所得格差の極端な拡大を避け、社会の調和を良く保っており、うまくやっているではないかといった発言がしばしば聞かれる。これまで駄目だ、駄目だと言われてきたのに、今さら何だという気もするが、英国や米国では社会の分断がまさに肌身に感じられるからであろう。


今後、民主主義と資本主義の調和をどう回復していくか。快刀乱麻の答えはないが、先進国政府の対応として取り敢えずみえてきているのは、所得格差を和らげる諸政策だ。とくに企業活動については独占禁止法の強化がある。GAFAのようなプラットフォーム企業に対するビッグ・データ取り扱い上の規制強化やデジタル課税などによる負担増の動きもある。政府の動きと並行して、これまでの市場化、金融化、グローバル化の流れの中で失われてきた社会の共感をいかに回復していくかという問題意識も、市民活動の中などでは強くなっているように感じられる。



▲画像 GAFA (Google / Amazon / Facebook / Apple)各社のロゴ


久しく日本のお手本であった英国、米国でのここ数年の出来事は、実は民主主義と資本主義の相克という、われわれの時代の底流にある奥深い問題の現れかもしれない。もう一方で、中国のように、権威主義的な政治体制と資本主義を組み合わせた新しいモデルを示そうとする動きもある。日本は19世紀後半以降、さまざまな苦労を重ねて民主主義と資本主義の社会を作ってきた。その歴史を踏まえ、令和の時代に日本として発信できるメッセージがあるように思う。


トップ写真:就任直後のトランプ米大統領と、Brexitへの対応に追われるメイ英首相との会談(2017年1月27日 於 ホワイトハウス)出典:President Donald J. Trump facebook


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