トランプの無知と無能 マラー報告書
Japan In-depth / 2019年4月28日 23時0分
▲写真 マリア・ブティナ氏(2014年)出典:Flickr; Pavel Starikov
報告書の中で、ロシア政府の意図はただ選挙を混乱させる目的からドナルド・トランプ候補を当選させることにシフトしたと明言されている。問題は、アメリカにとって非友好国であるロシアが自分を当選させようとする地下活動に、トランプの選挙活動スタッフがどれだけ積極的に関わり、協力していたかであり、既に元選挙対策本部長ポール・マナフォートや、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたマイケル・フリンらが有罪となっている。だが、トランプ本人はどうなのか?
▲写真 マイケル・フリン氏 出典:Flickr; Gage Skidmore
トランプがお題目のように唱えるCollusion(共謀)は厳密には法律用語ではなく、調査対象はConspiracyがあったかどうかで、そのためにはcoordination(相互協力)の証拠が必須なのだが、そのためにはトランプ自身が、ロシアの協力を得ることは違法だという自覚があり、意図的に協力したことを立証しなければならない。だがトランプは最後までマラー調査委員会の諮問に応じることはなく、書面で質問に返答したにとどまった。マラー報告書では、その書面でトランプは数十回も「記憶にない」とごまかしていたことがわかった。
マラー特別捜査官は、今回の調査ではトランプ自身がロシア側からの協力の申し出を違法と認識し、意図的に協力したとは言えないとしている。
第2部ではまず、米司法省が現職の大統領を起訴することはできないという見解ありきなので、もし、今回の調査で妨害行為がなければなかった、つまりシロだったと報告することはあっても、その反対に妨害行為があったので起訴することはない、と前提があった。だが、そこに書かれていたのは、大統領自身による具体的な司法妨害の数々である。
つまり、マラー特別捜査官は、司法妨害の証拠はこれだけあったが、それについて大統領に対し、どう措置を取るかは我々の仕事ではない、と言っているわけだ。ただ、この調査報告書と集められた証拠を材料に、米議会が任期中にトランプを弾劾するもよし、そうでなければ大統領の任期が終わったその瞬間に連邦政府や州政府が彼を起訴するのならそれもよし、と示唆している内容なのだ。
皮肉なことに、ロバート・マラー特別捜査官が罷免されず、報告書が無事に提出されたことが、司法妨害が成功しなかったことを証明しているのだ。だが、そこにトランプ大統領の妨害への明確な意図も、行動も詳細に報告されている。要するに、彼がマラー特別捜査官を排除しようとあれこれ画策するも、顧問弁護士や側近の誰1人としてそれを実行しなかったということだ。
トランプ大統領は、起訴されなかったのだから自分が無実なのだと吹聴したいようなのだが、この報告書が言っているのは、第1部では、トランプがあまりにも無知で、ロシアと協力するのが違法だという自覚すらなかった可能性があること、第2部では、トランプが上司としてあまりにも無能なので、周りの部下がマラー罷免という究極の妨害行為が達成されるのを回避したと言っているのだ。
トップ写真:トランプ大統領とプーチン大統領 出典:ロシア大統領府
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