唯一まっとう弁護士マギャン トランプ政権「行く人来る人」列伝6
Japan In-depth / 2019年5月1日 18時0分
▲写真 ロバート・マラー特別検察官 出典:Wikimedia Commons; Public domain
先日公表された「マラー報告書」では150回以上に渡ってマギャンの発言が引用されており、そこでもマギャンはトランプが自分に何度もcrazy shit(狂った世迷言)、つまりは調査の妨害をさせようとしたと書かれている。その中には司法長官代理のロッド・ローゼンスタインをクビにし、そこに引責しているジェフ・セッションズ司法長官を帰り咲かせ、マラー特別検察官の調査は「これまでの」ロシア介入ではなく、「これからの」介入を阻止する調査に切り替えさせる、というアイディアを思いついて、マギャンの自宅に朝っぱらから電話をかけたトランプのことも書かれている。これにはマギャンも「そんな指示に従うぐらいなら辞任する」と突っぱねた。
そこまでトランプ政権の内情を知り尽くした上で辞任していったマギャンだったが、彼がマラー特別検察官の前で証言するように召喚された時、なぜかトランプ大統領はそれを許した。おそらく浅はかにも、ホワイトハウスにいた頃のように、マギャンが偽証をしてでも自分を守ってくれると思ったのだろう。
だがマギャンはマラー特別検察官の前で偽証をするほど愚かな弁護士ではなかった。調査報告書が開示されてみれば、マギャンの証言によってトランプの司法妨害に疑いの余地はないことが明らかになったというわけだ。
さっそく米議会下院の司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(民主党)はマギャンに対し召喚状を発行した。本来、弁護士とクライアントとの会話はexecutive privilege(執行特権)と言って召喚されても秘匿できるのだが、マギャンがマラー特別捜査委員会に召喚された時にトランプ側がこれを発動しなかったため、今さら執行特権を行使できないことになっている。
▲写真 ジェロルド・ナドラー米下院司法委員長(民主党)出典:Wikipedia; Public domain
トランプ個人の顧問弁護士だったマイケル・コーエンが2月に同じ司法委員会に召喚されて証言した時、トランプを庇おうとする共和党議員はこぞって、コーエンが既に偽証罪で起訴されている事実を挙げ「嘘つきの言うことは信用できない」と攻撃した。だが、マギャンが司法委員会の席で赤裸々にトランプの司法妨害行為を証言したら、共和党議員は彼を攻撃する材料がない。マラー報告書にも次のようなやりとりが書かれている。
「大統領は、マラー特別検察官を排除するようにマギャンに伝えたことを、なぜ特別捜査委員会に報告したのか聞いた。マギャンはそうせねばならなかったこと、そして自分と大統領の会話は弁護士とクライアントの執行特権に当たらないと答えた。すると大統領は『そのメモはなんだ?なぜメモを取るんだ?弁護士はそんなことしない。そんなことをする弁護士を雇ったことはない』と言った。マギャンは、『自分は“本当の弁護士”だからメモを取るのであって、記録を残すのは悪いことではない』と答えた。大統領は『私にはロイ・コーンのような素晴らしい弁護士もいた。彼はメモを取らなかった』と言った」
トップ写真:トランプ政権の法律顧問をドン・マギャン弁護士 出典:Flickr; Gage Skidmore
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