ミャンマーに圧力かける中国
Japan In-depth / 2019年5月2日 18時0分
■ 中国は再開に向けて圧力強化
こうしたミャンマー政府の対中政策の転換に中国政府は当初戸惑いと衝撃を受けていたが、スー・チー政権が誕生したことをきっかけに「建設再開」に向けた水面下での交渉を強めている。
中国側は建設工事契約に基づき、中止となれば「契約違約金」「これまでの投資への損害賠償金」など多額を要求する構えをみせてスー・チー政権に圧力をかけているとされる。
こうした手法は中国の「一帯一路」構想の常とう手段で、債務不履行に追い込まれれば所有権、借用権で実質的に中国が運営管理に乗り出し、計画途中での中断や中止は損害賠償要求で窮地に追い込むなど、いずれにしろ中国側が有利な立場に立つことになるのだ。
野党「国民民主連盟(NLD)」時代は環境問題への配慮からダム建設に反対していたスー・チー顧問もミャンマー北部の電力需要への対応策も求められる一方で、住民の反対運動そして圧力をかけてくる中国との間で「板挟み状態」に陥っているのが現状といえる。
■ 地元中心に広がる反対運動
北部カチン州で二つの川が合流し、ミャンマーを代表するイラワジ川となる場所で進められていたミッソンダム建設計画は、周囲の豊かな自然環境を破壊し、生態系に深刻な影響を与えること、自然災害への影響、さらに文化遺産が破壊される懸念などから地元住民を中心に建設反対運動が再び大きくなっている。
▲写真 ミッソンダム建設現場に近い下流のエーヤワディー川(旧称 イラワジ川)。カチン州都ミッチーナーで撮影。 出典:Colegota(Wikimedia Commons)
1月27日には中心都市ヤンゴンで数百人規模の反対運動が起きたほか、3月25日にはヤンゴン市内で政治家や活動家、市民による反対集会が開催された。
4月19日には仏教、キリスト教、イスラム教の各宗教の指導者がダム建設計画の完全そして永久放棄を求める集会を開催するなど反対運動はカチン州の住民に留まらず、いまや国民的運動にまで拡大しようとしている。
▲写真 中国資本のエーヤワディー川(旧称 イラワジ川)ダム建設反対デモ(2011年9月27日ロンドン)。この3日後、テイン・セイン大統領がミッソンダム建設計画中断を表明。
反対運動の盛り上がりの背景にはダムそのものの環境破壊問題もあるが、その一方で対中強硬政策から親中政策に舵を切ろうとしているスー・チー政権と、「一帯一路」構想を押し付けてくる中国そのものへの反発が根底にあるとみられている。
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