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仏学力低下問題と日本の未来

Japan In-depth / 2019年5月5日 7時0分

「1986年の数学教師は、今の教師より5倍の教育を受けている。教師の教育が少なすぎるのだ。」


一方、公共機関の数学教師協会の会長、アリス・アーヌルト氏はこう述べる。


「教育改革のしすぎだ。改革を頻繁にするのは辞めるべきだ。」


両者の言っていることはどちらももっともである。しかし、こういった学力が下がる理由を調べるためにいろいろなメディアを調査したが、授業時間の少なさがまったく語られていないことが反対に気になった。


フランスは、バカンスが長く、子供の授業時間数、日数が少ないことでも知られている。しかも、過去のフランスと比べても授業時間数は減少しているのだ。



▲写真 カンヌビーチの様子 出典:Flickr; Paul Stein


1968年以前は、週30時間の授業が義務づけられていた。その後、1969年に土曜日の午後の授業を無くすことで、週27時間に代わる。そして、新たな教育改革がされた2008年には、土曜日午前中の授業も無くなることになり、週4日の24時間が義務となり、遅れがある生徒に対しては、更に2時間補習授業をプラスすることとした。これだけみても、数学の成績が今よりよかった30年前とは、授業を受ける時間が全体で週4時間から6時間も短くなっていることがわかる。


さらに、2008年の改革では、勉強が遅れている生徒に対しては学校で補習時間を設け、家庭での教育負担を減らすこととし、ヨーロッパで一番多いと言われてきた宿題の量を減らすこととなったのだ。授業数が減り、宿題が減ったとなれば30年前どころか、改革前と比べても勉強量が減ったのは明らかだ。それは、当然、子供の学力に影響を与えることは明白であろうと思われる。


がしかし、今回は得に授業時間短さがあまり言われなくなった背景には、オランド政権時代の改革で、水曜日、もしくは土曜日の午前中に授業をすることとし、週4日半を実施したがあまりうまくいかずにオランド政権終了後にすぐに週4日に戻された経緯も関係してくるだろう。やり方も悪かったのかもしれないが、まず、市町村の金銭的負担が大きかったことで、すぐに週4日に戻した学校が多かった。



▲写真 フランソワ・オランド元大統領 出典:ロシア大統領府


改革をすれども、学力は下がり続けるフランス。スーパーのレジ係がおつりの計算を間違うどころか、最近ではコインを数えて合計を出せない店員まで現れる状況である。


そんな中、現在マクロン政権が進めている高校のバカロレア改革では、高校2年生から数学は必須ではなくオプションとなり、数学を学ばなくてもいいと言う選択が可能になった。数学が苦手な生徒は、数学に苦労することがなくなると喜ぶ一方、教育現場では危機感を隠しきれない。理数系の高校に行っている学生がオプション選択の希望をリストを出した際に、数学を選択していないと言う状況に直面し、担任の教師が数学を選択することを説得する事態にもなっている。


フランスの子供達の数学力の低下をどのように食い止めるのか、フランスの教育機関が長年、頭を抱えてきた問題だが、現状では解決には程遠いようだ。


こう読んできて、「フランスは、大変だね。」と他人事のように思ったかもしれないが、まったく他人事ではない。「ゆとり教育」を始め、日本はあらゆる教育制度を欧米を見習おうとしてきた国である。海外の制度を持ってこようとする以上、こうった学力低下は日本の未来とも重なってくるかもしれない。教師の研修時間を削ったり、教育改革を頻繁に行ったり、授業時間を短くすることは確実に子供全体の学力に影響する。海外から学ぶなら、こういう事実も学んでいくべきなのである。


トップ写真:授業を受ける子供たち(イメージ)出典:pxhere


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