日米自動車問題の偽ニュース
Japan In-depth / 2019年5月20日 11時6分
自由な市場経済にまさに逆行する厳しい措置だった。その背景には性能がよく廉価の日本車が米国市場に洪水のように売られて、米側の自動車メーカーを圧倒し、アメリカ全体の経済に打撃を与えているとみえる実態が存在した。
そんな対米輸出規制をトランプ政権が実行する、というのだ。事実とすれば、とてつもない話しである。
だがこのブルームバーグ通信の記事が誤報だった。その誤報を事実として報道した朝日新聞の記事も結果としてフェイクニュースとなった。その報道から数日が過ぎても、そんな内容の大統領令は署名もされず、発表もされなかった。逆に日米両政府により、「日本に対する車対米輸出の数量規制などという手段は検討されていない」とする否定の言明がはっきりと出されたのだ。
朝日新聞もその誤報については事実上の訂正の記述を翌5月18日付朝刊で載せていた。以下のような記述だった。
「日本政府は米側が日本車の対米輸出制限を求めないことを交渉責任者のライトハイザー通商代表から確認した。茂木敏元経済再生相が17日の閣議後会見で明らかにした」
「茂木氏は会見で、ライトハイザー氏とのやりとりについて『そういった措置(輸出制限)はとることはないですねという確認をして、『ありません』という答えだった』と話した」
▲写真 茂木敏元経済再生相 出典:Flickr; IAEA Imagebank
ところが朝日新聞のこの記事はこの時点で最重要な「米側は対米輸出制限を求めない」という点を見出しにはまったく出していなかった。トランプ政権は輸入自動車への追加関税措置を11月まで延期した、という記述を見出しとしていたのだ。だから前日に流したばかりの大ニュースが虚報だったことはこの18日の記事を一見しただけではわからないのである。
ただし朝日新聞は5月17日付夕刊では小さい記事で「車輸出制限、茂木氏『米は否定』」という見出しを出していた。日本政府の公式代表からアメリカの政府も大統領もそんな方針は決めていないと明言されたのだ。つまりは朝日新聞の報道内容の否定だった。
ところが朝日新聞はその「否定」が載った同じ5月17日の夕刊では一面のコラム「素粒子」で以下のような記述を載せていた。
「さあ来たぞ。日本車の対米輸出制限の報道あり。『安倍抱きつき外交』で大丈夫か」
対米輸出制限がいかにも事実であるかのような前提を書いたうえで、朝日の年来の安倍叩きを「抱きつき」などという稚拙な表現でまた繰り返していたのだ。
この時点では「日本車の対米輸出制限」などないことがわかっていたのに、あえてそれが事実であるかのように書いているのだ。来てもいない動きを「さあ来たぞ」などと誤報を重複させる。偽ニュースの屋上に虚構の屋を重ねたコラム記事とでもいおうか。
トップ写真:自動車輸出イメージ 出典:Pixabay; Niek Verlaan
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