仏で大論争、延命治療の是非
Japan In-depth / 2019年5月23日 0時10分
家族内の意見は真っ向から対立している。ランベールさんの両親と妹・義弟は、息がある限りランベールさんに生きていて欲しいと言う一方、妻と弟、妹、3人の義弟、甥(おい)は、ランベールさんが言っていた「誰かに依存する生活はいやだ」と言う言葉と、脳幹が損傷し回復の見込みがないことを理由に、この植物状態と言う苦痛から解放し、安らかな眠りについて欲しいと願っている。
その後、2回にわたる家族と医師団・治療関係者の協議後、主治医は再び延命治療を停止した。ところがまた裁判所は「人工的水分、栄養補給は執拗(しつよう)な延命治療ではない」とし協議結果を無効にしたのだ。そこで、妻と甥が提訴した国務院は新たな治療証明書を要求し、医師会、倫理委員会、医学アカデミーに意見を尋ね、コンセイユ・デタ(国務院)の判決を求めた。結果6月24日、国務院は患者の人工的水分・栄養補給の停止を最終的に認めた。だが、その直前に両親が欧州人権裁判所に提訴しており、判定が下るまで「延命治療を続けるべし」と発表されたのである。
両親は、病院の近くにアパートを借り、長年ランベールさんの看病を行ってきた。そして付き添っている間に、植物状態だと言われながらも、なんらかの反応をする姿を何度も見てきているのだ。昏睡状態であると思われているが、食事ができたり、発声したり、どちらかと言えば重度の障害者である。そういった様子を、次々と動画で流してアピールし続けた。
▲動画 ランベールさんの様子(Youtubeより)
しかし、そのかいもむなしく、2015年6月5日、欧州人権裁判所も、植物状態にあるランベールさんの生命維持中止を認めたフランス裁判所の判決を支持する判断が下された。今後の欧州における指針となりうる判決でもあった。
その後、2016年に、レオネッティ法をさらに厳格化した、クレス・レオネッティ法が制定された。当時の大統領フランソワ・オランド氏の政権公約は「終末期患者の耐え難い苦痛を和らげる手段が無くなった場合に、明確で厳格な条件の下で、尊厳を保って命を終えるための医療手段を要求できるようにすることを提案する」としておりその公約を実現した形だ。
レオネッティ法では、延命医療を打ち切りには、医者の決定に重みがあったところを、クレス・レオネッティ法では、本人の意思が考慮されることとなり、事前指示書で延命医療を拒否することができるようになったのだ。また事前指示書がなく、本人が意思を伝えられない場合は、家族からの証言を聞くなどの方法がとられ参考にされることになった。そうした場合、ランベールさんの妻の本人が言ったと言う「誰かに依存する生活はいやだ」と言う証言は、判断する上で以前よりさらに考慮されるようになるだろう。
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